コラム
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2021/9/10
1841    歴史から学ぶこれから

現代社会は中華思想対資本主義の構図です。どちらが覇権を持つのか現時点では分からないと思います。ただ歴史から学ぶことで結果を違ったものにすることができます。中華思想は中華が世界の中心にいて、他の国は中華に従うことを求めるのが歴史から理解できることです。一方、資本主義はコロナ禍において益々グローバル化を進めています。GAFAを始めとする巨大企業が世界を一つの市場にまとめあげようとしています。市場が一つになることは世界中に製品が行き届き、価格が均一化されて良いことのように思えますが、これから発展しようとする国にとっては機会が奪われる恐れがあります。

どちらの主義も世界をまとめ上げようとする方向に向かっています。かつては資本主義対資本主義の世界でした。それはアメリカを中心とした市場原理主義の「アングロサクソン型」経済と、集団や合意を重視し投資において中長期の展望に立ち、社会貢献にも配慮する共同体型であるドイツと日本のような「ライン型」経済のどちらに向かうかの戦いでした。

そして現代はアメリカの「アングロサクソン型」経済が資本主義の覇権を握ったことで、資本主義対中華思想の覇権争いへと世界は変化しています。経済的にいうと、中華思想は国家が資本主義に介入し管理する経済であり国家資本主義ともいえます。

現在、中国が国家主導で技術開発と産業の育成を行っており、巨大国内市場と共に世界の市場に向けて輸出しています。その額は中国抜きで世界経済が回ることが難しいぐらいの規模になっているようです。この国家資本主義と対抗していくことを世界は考えている最中です。

例えば、中国への工場進出を抑えることや各国企業の国内回帰などがあります。コロナ禍において必要な施策だと考えますが、工場の立地場所の確保やコスト面などを考えると簡単ではないと思います。民間企業は市場のあるところを目指しますから、それが中国であってもなくても、巨大市場を目指すことには変わりありません。

中華思想に戻ります。アヘン戦争で勝利したイギリスは、清国に対して香港をイギリスに渡すように命令します。清国は香港を「99年間、お貸しするので99年後に返してくれたら良いですから」と答えて戦争処理を終えました。

イギリスは、99年間の割譲は奪い取るのと同じように限りなく永遠のものだと考えて「香港を得た」と思います。ところが清国は「香港は100年後にはわが国に帰ってくる。100年後の子孫にとって、イギリスに支配されたそれまでの99年は関係ない。そこから国を創れば良い」と考えたのです。

このことで、スピードを優先する資本主義国との時間軸の違いが理解できると思います。これが資本主義の考え方と中華思想の考え方の違いです。この時間軸を理解して、現代人は中華思想を考える必要があります。

コロナ禍の2020年の中国の経済成長率は2.3パーセントとプラス成長を果たしています。恐らく先進国でプラス成長を遂げたのは中国だけだと思います。また2021年の1月から3月までの経済成長は、前年同期比と比較して18.3パーセント増えていると発表されています。昨年はコロナ禍で経済成長が停滞していたので、この数字だけを見て「既に回復している」と考えることはできませんが、回復傾向にあることに違いないと思います。

一方「アングロサクソン型」資本主義の株価は上昇を続けていますが、実体経済は戻っているかどうかは分かりません。大国同士の経済戦争の行方はこれからですが、時間軸を意識しておかなければ、短期間で勝敗を結論できるものではないと思います。