コラム
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2021/8/31
1834    プロフェッショナル

和歌山市内の飲食店を訪問した時のことです。「暑い中訪ねてくれて、ありがとうございます。少しゆっくりしてください」と言ってくれたので経営者と懇談しました。経営者は次のようなプロフェッショナルな話をしてくれました。

飲食店は清潔で安全、お客さんの健康が何より大事なことです。美味しい料理も大事ですが、安心できる料理を提供することがもっと大事なことです。そのためには清潔にしておくことが求められます。厨房を清潔に維持することに加え客席も同じです。一日の終わりには厨房や客席の机も床も全て清掃します。そしてお皿や用具類は全て洗浄して清潔な袋で包んで保管します。

ゴミは絶対に見逃しません。米粒一つでも残しません。もし米粒が一粒でも残っていたら、人がいなくなった厨房に虫が現れます。人のいない暗い店内では間違いなく虫が出てくるのです。店内を我が物顔で移動するので清潔にしておいても意味は成さなくなります。そこで食品の残りやゴミは店内に絶対に残しませんし、清潔にしてから店を閉めています。これだけやって清潔さを保つことが出来ると思いますし、お客さんに安心してもらえるのです。

見えないところを大事にしておくことがお客さんの安全と安心につながりますから、店内を清潔に保つことがお店にとって最も大事なことです。お客さんが来てくれて商売が出来ているのですから、安心して来てもらえるようにするのは当然のことです。どれだけ疲れていても一日の終わりに店内を清掃して、ゴミを処分してから帰路に着くことにしています。

それに加えて定期的に消毒事業者にお願いをして店内を隅々まで洗浄しています。清潔さはお客さんから見えませんが、店内の感じで分かってくれると思います。

と言う話を聞かせてくれました。

この方はプロフェッショナルの言葉が似合います。見えないところを大事にしていること、お金を掛けているのはプロの仕事です。見えないところを大事にしてくれることで安心と安全を感じることが出来ます。

僕は「プロフェッショナルな考え方で、お客さんのことを考えた仕事をしていますね」と話すと「とんでもない。プロだなんて思っていませんから。ただの田舎の小さなお店のおばちゃんですよ」と笑顔で答えてくれました。

この笑顔も「やっぱりプロフェッショナルだなぁ」と感じました。この表情で分かったのでしょうか、「何もないお店ですよ。こんな暑い時に県の助成金の説明に来てくれてありがとうございます。有り難いことです。夏は疲れが溜まりますから、疲れたと感じたらいつでも来て下さい。冷たいコーヒーぐらいしかありませんが飲んで行ってください」と伝えてくれました。

非接触の社会ですが、コミュニケーションは会うことから始まります。直接会うことの空気感や温かい会話は心に届くものです。涼しい部屋にいながらリモートも良いことですが、暑い中を潜りながらお店を訪ね、入れてくれた冷たいコーヒーを飲みながら会話を交わすことも良いものです。

従来とコロナ禍の社会が混在した時期が続いています。新しい社会の価値はどちらになるか分かりませんが、暫くはハイブリッド型になりそうです。

ここで思い出した言葉があります。最先端のデジタル会社の元役員の方が、日本がデジタル社会に突入する前に将来を予言した言葉です。「間違いなく日本は、そして世界もデジタル社会に向かいます。デジタル社会は効率化が図れ、会わなくても仕事ができますしモノを買うことができる社会になることです。つまり人と人との接点を少なくしていきます。デジタル化は便利で家にいながらモノが買える豊かな社会になりますが、デジタル化が進展していくとやがてアナログに戻ると思います」という言葉です。

今もこの言葉は現代社会と未来を予言していると思っています。