コラム
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2021/8/27
1832    目標設定

宇宙開発に関する会議を行っていた時の話です。例えば宇宙産業が求める人材育成に関して協議をしたのです。

現在、わが国における宇宙に関する研究者は約4,370人ですが、高度技術者は約770人、一般従事者は約3,850人で、合計で約9,000人に過ぎません。一般従事者とは宇宙機製造の実労働者ですから、実務では特に必要な人材だといえます。

では何年後までに求める人材を養成すると目標を立てるべきなのでしょうか。達成すべき目標設定は3年先、または5年先に定めるべきだということです。目標設定を10年先に定めるような計画は実現することは稀だと思います。やはり現実的に計画を策定して具体的に行動できる3年先を目安とすべきですし、5年先には完成することを目指すべきです。

10年先の計画では現在の行動を具体化できませんから俊敏に動くことはできません。そのため私達は、目標設定は3年先のものとして、5年先に達成を目指すことが必要だということです。

最初から10年先の目標を議論して策定しても実現可能性は低いと言うことです。本気で達成する氣があれば3年先、5年先の目標にすべきで、もし10年先の中期計画として策定するのであれば、中期目標として3年先と5年先に中間評価をするようにすべきです。

現在から10年先を見通すことは限りなく不可能です。例えば和歌山県には長期計画がありますが、策定した時にはカーボンニュートラルの達成目標はありませんでしたから、この計画の中には「大型火力電源」を和歌山県の産業と位置付けています。

今見ると「時代の要請に合致していない」と思いますが、策定当時は「長く京阪神への電力移出県としての役割を果たしてきた県の主要産業として将来も必要だった」のです。事例として取り上げてこの項目は間違いではありませんが、時代と共に社会が求める価値は変化しているのです。

その他にはAIの進展や自動運転の車の開発、水素の活用などは予想を超えて進展していますから、当時の記述は「周回遅れ」のものになっています。また計画策定当時は、わが国では大型の半導体の製造技術も工場も無理な状況だったことや、ロケット射場建設も具体化できていなかったことから「半導体企業の誘致を図る」や「宇宙関連産業の誘致を図る」などの記述はありません。

ところが米中の対立や世界的企業は安定した国への進出を求めるようになってきたことから、和歌山県で取り組むことは不可能ではなく、計画に記述したところで違和感はなくなっています。つまりどんな慧眼の持ち主であっても、現在から10年先を見通すことは出来ないと考えるべきです。

ですから10年先に実現すると言う人は行動しない人の言うべき台詞で、行動しようと考えている人の目標は3年先、5年先に設定しているのです。見通せるギリギリのところが3年先であり、成果を出すことが出来ると考えられる限界地点が5年先なのです。

丁度会議の前に「坂本龍馬が活躍した時期は28歳から33歳までの凡そ5年間でした」と話していたところでもあり、5年という数字が目標設定と行動できる期間の目安だと思います。ですからやるべきことを実現するために目標と定める期間は3年先です。社会の価値も見通せる技術も、チームを組む人も具体的な技術にできるからです。