コラム
コラム
2021/8/5
1820    ハッピーエンド

技術者と経営者の方々と会議を行い半導体技術などの話を交わしました。特に半導体は前工程では大量の水と電力を必要とするようです。工場には広さと共に水と電力が不可欠であり、かつ電力は世界の潮流とメーカーの要請もあり「RE100」が必要となっています。わが国には広大な工業用地と大量の水、そして「RE100」の電力を供給出来る県はないと思います。
国際競争力をつけるためには製品の国際標準化は勿論のこと、製造工程においても国際基準に則る必要があり、絶対条件になっています。言うまでもなく半導体を始めとする先端技術において日本スタンダードが通用する時代は遠い昔に終わっていますが、黄金の1980年代の記憶が残る世代にとっては、その残像が消えていないことが厄介です。ようやく国を挙げて「半導体」や「電気自動車」「水素や洋上風力」の掛け声があがり始めていますが、地方都市では具体的なものは見えていないので政策に変化はありません。

地方都市こそハイテク企業を誘致できる環境がありますから、国から方針の説明をしてもらって、地方自治体と県民の方々への協力を促して欲しいところです。
そして日本で不足しているのが「RE100」の電力で、現時点において全てを賄える工業団地はないように思います。報道によると北海道の石狩市の工業団地では「RE100」の電力が供給できることから、予想を上回る工場進出の問い合わせがあるということです。また熊本県でも半導体企業の誘致に向けて水と「RE100」の電力供給の検討を開始しているという噂も聞こえています。
わが和歌山県でも、世界標準仕様の工業団地を作り上げて誘致を促進したいと考えています。改めて豊富な水と電力を用意することがインフラ形成だと思いますし、来るから整備するのではなくて、検討ができる体制を整えておくことが誘致活動とスピード感覚だと思います。

半導体などの先端技術と製品の得意分野を大きく大胆に分けると、設計は欧米で、それを製造する機器は日本、そして製造工程は台湾や韓国、中国などAPEC諸国が担っています。日本は世界でも重要な位置を占めていますが、半導体などの製品化には周回遅れがあります。

先行している技術に対しては、一気に追いつくことも追い抜くこともできません。一気に追いつくことができれば楽なことですが、世界そして世の中は甘くありません。一歩ずつ距離を縮めていく以外に追いつく手段はありませんが、そう思わないのであれば、わが国は黄金の80年代の幻想を見ているよう、或いは幻想を現実だと思っている人がいると思います。

そんな状況にあるので和歌山県が目覚めれば有利に政策を進められるのです。問題は大きな勝利を収めたことと他府県に先行する闘いをした経験が少ないことです。大きな勝利を得るためには局地戦とは戦略が違います。まだ他が参入していない闘いをするためには、先行事例がないので胆力と人脈、覚悟と決断など、これまでご縁がなかった勇ましい言葉が並びます。この言葉を基にして実行することが求められるので、先行してゴールを駆け抜けるだけのスピードが出ないのです。

気持ちを切り替えて「和歌山県の将来を決定づけるような大勝負。このような機会はないかもしれないのでやってやろう」という気持ちを持って挑みたいのです。覚悟を持って行動する姿は映画のシーンになります。歴史に残る名作を創る機会があれば、勇気を出して挑みたいものです。大作ですから簡単なストーリーにはなっていません。物語の途中、困難や苦悩の日々が待ち構えていますが、必ずハッピーエンドが待っています。