コラム
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2021/7/19
1809    この国の将来のために

不動産会社の経営者のAさんと懇談しました。「近年、国力が低下しているように感じています。経済力や企業の技術力は韓国や台湾に劣っているのではないですか」という話を切り出してくれました。
「ご指摘の通りで、アメリカ企業の部品製造などを受けていることから韓国や台湾企業の技術力が向上しているのは事実です。半導体や電子部品、携帯電話や人工衛星などの分野では日本は敵いませんし、簡単にキャッチアップできる差ではありません。追いつくことが困難な状況だと認識しています」と答えました。

これは台湾や韓国企業の技術力に接していることから、その差が埋まるものではないことを実感していますし、加えて中国企業の技術力にも差をつけられていると感じています。AIやITの分野では技術力を縮めるどころか差が拡大していますし、わが国が革新性を持たなければ自動車や医療でも追い付かれることを感じています。このことは、中国企業の実力をある程度理解している人であれば実感できると思います。

まして地球環境問題を前提にすることが世界のスタンダードですから、欧米は勿論のこと中国にも劣後となっています。極端に言うなら、トランジスタ技術の時代のわが国は技術大国でしたが、半導体になってからは台湾、韓国、そして中国に一方的に差をつけられています。ようやく気付いたのですが、この差を縮めることは容易ではありません。

ハイテクなどに精通している人材の差は所得などの処遇面での差だと思いますが、必要な人材を厚遇で迎え入れる企業は日本では稀なので、人材を集めることや引き留めることは難しい状況です。人材には国を想う気持ちを持ってもらいたいのですが、国や企業には人材を処遇することを求めたいと思います。
もし年俸が1,000万円の日本企業と年俸3,000万円の外国企業からオファーが来た場合、多くの人材は外国企業を選択すると思います。わが国を想う気持ちを持っている人材であっても処遇がこれだけ違えば、必要とされている企業に籍を置くことになります。国が将来のために必要とする人材に対しては処遇しなければ、今後はますます国外に人材が流失することに拍車がかかります。しかも活用できる研究費に格段の差がありますから、研究者は国外に流失する流れを止めることは容易ではないのです。
人材は必要とされることに意気を感じますから、必要とされていると感じることが企業を選択するための要素になります。「あなたが必要だ」と言ってもらえることも大事ですが、処遇も大事な要素です。まだ日本企業の実力がある間に人材養成とこの国で働くと思えるような環境を創り出したいものです。

全てではありませんが世界の先進技術の現状は、設計は欧米、製造機器と部品供給は日本、組み立てと製品化は台湾や韓国などになっています。設計と製品化する過程が利益を得るのであって、機器販売と部品供給の利益率はそれらと比較して低く抑えられています。国内で考えてもメーカーの利益は高いのですが機器の納入や部品供給の企業は、特殊な技術でない限り価格を支配できるまでに至っていません。
世界のハイテクなどの市場はそれと同じような構造になっているのです。設計と製造の分野を取り戻すことを目指したいと思いますが一気に奪還はできないので、技術力を高めるために人材と研究の重要性を理解して次世代に備えるべきです。

わが国の将来のために、人材と技術力を高めることを念頭に置いた活動を行っています。そのためには台湾やアメリカの先進企業と組んで国内で製造拠点を設けることが必要だと考えています。製造拠点には日本企業にも参画してもらい、技術力を高めていくことで国際競争力を持った企業と製品を供給することを目指していきます。

懇談の締めくくりにAさんから「わが国の将来のために活動してくれることを期待しています。既存の勢力に任せているようでは日本の将来はありませんから」と激励をいただきました。