コラム
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2021/7/8
1803    歌手の心意気

令和3年6月、ふじたみかんさんのコンサートが開催されました。みかんさんは「コロナ禍でコンサートをしても来てくれるかなと思い悩みました。でも歌の力を信じて、例えお客さんが10人でもやって元気になろうと思いました」と話したように、歌は元気や希望の力を持っています。

みかんさんはシャンソン歌手ですがポップスや演歌も歌えるので、来場者を音楽の力で楽しませてくれました。今回の歌のテーマは人との出会いや感染症、他の戦いに打ち勝つことだったと思います。現代社会は、人とのご縁を大事にすることと戦争に反対することは正しいことです。シャンソンは愛や反戦をテーマにしたものが多いのは、普遍性のあるテーマを伝えるためで、そこから広がったようにも思います。

第一部の2曲目を終えた時、司会者から舞台挨拶の紹介を受けました。第一部と第二部の間の時間での舞台挨拶だと思っていたので、実は出番が早まったことに焦りました。みかんさんの紹介と和歌山シャンソン協会とのつながりなどの挨拶は大丈夫なのですが、実は「片桐さん、舞台で挨拶のあとにシャンソンの曲を一曲歌ってください」と依頼されていたからです。依頼を受けた時は「分かりました」と答えていたのですが、前日になって「明日の選曲と練習をしなければ・・」と焦ったのです。

選曲は、いつも和歌山巴里祭のエンディングの場面に全員で歌う「オー・シャンゼリゼ」が適していると思いました。街を歩く元気さ、弾むような明るさ、そして明日への希望が伝わるからです。問題は歌の練習でした。昨日の夜になって「明日、応援の挨拶の後に歌わなければ」と思うと焦り始めました。

前日、そう思ってから練習をしたので何とかなりましたが、舞台で歌うことの大変さを感じました。歌詞を覚えることはイロハのイにもならない基本ですが、その基本でさえ難しいのです。「歌詞は大丈夫かな」「音程は外さないかな」など不安の要素が出てくるからです。

不安の要素を消す方法はたった一つです。緊張しないで歌える自信を芽生えさせることです。そのためには繰り返しての練習以外にありません。繰り返すことだけが不安に打ち勝つ唯一の方法なのです。たった一曲でしたが、声を出して歌う練習によって舞台で歌える心の準備とできるという感触が芽生えました。

それにしても何曲も歌ったみかんさんは「凄い」と思います。どれだけの練習時間をかけて「心を整えてきたのだろう」と思うほどです。「自分が人に与えるもので簡単なことはない」と思います。練習を続けてきた結果、モノになって初めて人に与えることができるのです。それは歌を聴いてもらえるということです。

議員も同じで、しっかりと勉強して知識を得て、現場を訪ねて、多くの人と意見交換を行って、自分の意見を文章にまとめて提言する形に仕上げて、そして推敲して質を高めてやっと本会議で質疑を交わすことが出来るのです。皆さんに議会にきてもらえるのは、民意を反映させるために長い時間を掛けて準備をしていることと質問内容の質を高めていること、つまりプロだからです。

自分の仕事はプロでなければ、人に動機付けやメッセージを伝えることも感動を与えることもありません。プロは人にメッセージを伝えられますし、感動も与えることが出来るのです。

プロの舞台を観て聴かせてもらいました。コロナ禍でコンサートの機会は限られたものになっていますが、みかんさんの取り組みのお陰で、良い時間をいただくことができました。