コラム
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2021/5/14
1769    建国の精神に学ぶ

巨大災害や疫病などの非常時に人を動かす力は言葉だけです。ですから言葉には力を宿らすことが必要なのです。言葉に熱意、情熱が乗っていなければ人を動かせることは出来ません。人は説明だけで、論理的な説得だけでは動かすことは出来ません。熱意ある言葉が人を動かせる力になると思います。

人の動きを止める。止めた施設の一部を解除する、収まる前に見切り発車で人を動かせる。また人の動きを止めるの繰り返しが、昨年から現在までの感染症対策です。

感染症対策は、誰がやっても封じ込めることは難しいことは承知していますが、「お願いする」にしても言葉の力が必要です。決意のある強さ、痛みを感じとってそれを包み込む優しさ、そして熱意を言葉に乗せることができたら、同じ「お願い」でも私達の捉え方は違ってくると思います。

成果が出ていないことに対して、それを何度も同じことを繰り返すことを求めたなら、「お願い」しても効果がないことや緩んでくることは当然です。伝わり方が良くないので「どのように言うか」を考えてみたいものです。

こんな時こそ「日本書紀」に学ぶべきです。神武天皇の建国宣言の中の言葉がわが国の基礎だと思います。

「いざというときには互いに食料を融通し合うことができるように、日本中が一つ屋根の下らくらす家族のように助け合うことができる国にしていこう(原文は省略します)」です。この解釈は小名木善行さんの「日本のすごい秘密」から引用しています。

この本からの解説が素晴らしいので引用を続けます。

「いざ災害のとき、広域地域をまたがって、相互に食料の流通ができるようにする。そのために国の中央にある橿原の地に都を置き、そこで全国のお米の備蓄と、お米の相互扶助をコントロールしていくのだ。これを行うためには、中央政府が常に公正かつ公平で、民衆からの信頼を得ていなければなりません」というものです。現代においても当時と変わりなく、神武天皇の建国の思いが伝わってきます。

ここで凄いことは「災害に備えた国のしくみを創っている」ことと「政府が民衆の信頼を得ていること」です。建国間もない国のリーダーが、この国が将来とも繁栄するために必要なことを伝えてくれているのです。現代の国のリーダーがこの建国の精神を有しているなら、コロナ禍にあっても国民の信頼を得て、今を耐えて困難を乗り越えられることになります。

但し「政府が公正かつ公平で信頼を得ていること」が条件となります。国の感染症対策がうまく国民に伝わらないのは、そして国民の心に響かないのは、建国の精神に基づいていないからだと言わざるを得ません。

形だけ真似しているのは「中央集権体制」と、お米に変わるものとしての「お金のコントロール」だけです。形を作って魂を入れずの状態であるなら、国民はついて行かないと思います。

人は歴史に学ぶべきだと言われますが、歴史に学ぶまでもなく「日本書紀」に建国の精神が書かれているので、わが国が建国した時の考え方に基づくだけで良いのです。

この建国の精神は、今の時代においても世界に誇れるわが国の誇るべき価値なのです。国民のことを想うわが国が、感染症を克服できないはずはありません。「法の支配の国」において法律に基づかないで人を動かすことが可能なのはリーダーの言葉だけです。

今の困難の時にこそ、強くて思いやりのあるリーダーの、熱い気持ちがこめられた言葉を発して欲しいと願うのです。わが国はこれまで幾多の疫病に打ち勝って来た歴史がありますから、後々に語れるような対応をしてくれることを願っています。