コラム
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2020/12/25
1755    責任感

責任感と言う言葉を感じた出来事があります。令和3年1月の誕生日を持って65歳の定年退職を向かえる事務員の方がいます。60歳で一旦、定年を迎えた後、再雇用で5年間の定年延長により勤務していました。そして来年1月の誕生日で定年退職を向かえることになっています。

後任の事務員さんが決定しているので、年明けから事務の引継ぎに入ることになります。本来であれば誕生日の日の前に退職をするところですが、責任をもって引き継ぎをするために1月末まで勤務する契約になっているのです。これは雇用主の希望によるものなので、依頼通りの退職日にしたのです。

ところが誕生日の前に退職をするなら失業保険は150日間、支給されることになっているようです。但し、これは保険期間によって失業日数は異なるので、この方の場合です。

しかし誕生日を超えて退職日を設定した場合、失業保険の受給期間は短縮され、50日間支給されることになるようです。本来であれば受けられる失業保険の期間が100日も短縮されることになるのです。

この話を聞いたので「長い期間、失業保険を掛けてきたのだから、誕生日前に退職する方が有利になりますよね。もったいないからそうしたら如何ですか」と伝えました。

そうしたところ「後任の人に迷惑をかけることは出来ないと思っています。今回、雇用主から『1月末まで務めて引継ぎをして欲しい』と言われているので、月末までの期間で引き継ぎをするつもりです。責任をもって引継ぎをするためにそう決めました」と話してくれました。

これは責任感以外の何物でもありません。支給期間が100日も短縮されることよりも、責任をもって引継ぎを行うことを選択したのです。実に清々しい決断を聞いて、爽やかな気持ちになりました。最近、お金よりも責任感を優先させた話は聞いたことがないからです。

お金に関することは少しのことでも苦情を言ってくる人が多い中、もらえるお金をもらわないで責任を優先させたことは「凄い人だ」の一言です。

その直後、僕は知人に依頼して「事務所の設立準備段階で、来年4月から事務員さんを採用する計画がありますね。今日、とても懇意にしてもらっている方なのですが、この方を改めてとても素晴らしい人だと思いました。実は来年1月末で定年退職するのですが・・」と前置きして、先ほど聞いた失業保険に関する話を説明しました。

そうしたところ「本当に感動する話です。その方に是非とも会わせてください。片桐さんが紹介してくれるそんな方なら大歓迎です。是非、私のところに来てもらいたいと思います」と即座に応えてくれました。

相手に感動を与えると、その人の後の行動につながります。今回、感動する話を聞いたことから、直ぐに就職のお願いをする行動につながりました。一見、金銭面では損をしたかもしれませんが、やりがいのある仕事の機会が訪れたことは、これからの人生から考えると得をすることになります。自分の意志で責任感のある決断をすることは、自分で未来を切り拓くことになるように感じます。

失業保険をもらうよりも責任感を優先させたことは、その人にとって当たり前のことかもしれませんが、現在の価値観からすると当たり前のことではありません。人として素晴らしい決断をしたことで人を動かせたのです。僕は知人に電話をしたのは「明日、会うことになっていますが、今日直ぐに聞いて欲しい話があったから電話をしました。明日、お願いしても良いのですが、たった今、感動した直後の話を伝える方が言葉の鮮度が高いので、今から聞いてください」と言ってお願いをしたのです。明日の言葉よりも、感動を味わった今の言葉で伝える方が、感動したことが相手に伝わります。

この感動によって行動できたことを嬉しく思っています。令和2年12月の出来事です。