コラム
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2020/5/26
1749    JIN -仁-

ドラマ「JIN -仁-」再放送を観ました。こんな素晴らしいドラマがあることを知りませんでした。新型コロナウイルス感染症による影響を受けている時、大事なことを教えてもらいました。

歴史の中で生きている私達は、例え小さな役割であっても確かに歴史を作っているのです。歴史は現代進行形であり、予め決められてものではなく人の思いと行動によって決められていく、変わっていくものだということです。人は出会い、そこから物語を刻んでいく。その物語とは決して小さなものではなくて歴史そのものなのです。

生きている社会において、そして本人でさえ、いつか忘れていくかもしれない物語であっても、残るものがある。個人として持っておける物語があれば、それで良いのかもしれないと思えます。

最終回の橘咲さんの手紙には泣かされました。中でも次の言葉は、医師、南方仁が表面的には神の手の使い手であっても、人間としての優しさを持ち得た人物であったことを見抜きもそれこそが技術よりも人として大事なものだと訴えかけてくれるものでした。

「そのお方は揚げだし豆腐がお好きであったこと。涙もろいお方であったこと。神のごとき手を持ちなれど、決して神などではなく、迷い傷つき お心を砕かれ ひたすら懸命に治療にあたられる『仁』をお持ちの人であったこと。私はそのお方に、この世で一番美しい夕陽をいただきましたことを思い出しました」

とても大事なものの気づきを与えてくれる手紙です。

人は人に対して辛さや苦しみを表面に出すことはありませんが、本当は心を傷つけています。そんなことを分かっている人がいる。感動の場面です。時代は江戸末期から平成へと移ります。何も残されていない歴史の中に咲さんの手紙だけが残されています。何も残されていなくても、その時代の歴史を築いてきたことを知らされます。

新型コロナウイルスによって社会は止まりましたが、そんな時、こんな秀作に出会えたのですから、得たものもあったと思います。

そしてドラマのラストの南方仁医師の台詞です。

「当たり前のこの世界は誰もが戦いもがき苦しみ、命を落とし、勝ち取ってきた無数の奇跡で編上げられていることを俺は忘れないだろう。そしてさらなる光を与えよう。今度は俺が未来のためにこの手で」

です。

教科書でしか知らない江戸時代、幕末。ドラマにあったようにその時代を懸命に生きた人達がいたと思います。歴史に登場しないけれど、今の時代に続く道を築いてくれた人達がいるのです。その人たちが存在していなければ、懸命に生きてくれていなければ、現代社会は違った姿になっていると思います。歴史は創り替えることはできないから、この時を懸命に生きているのです。自分に何の役割か果たせるかどうか分からないとしても、苦しみながらでも生きていることが後の世に続く種になっているのです。

昭和、平成、そして令和の時代で今進行している物語は知られることはない物語の方が圧倒的に多いと思いますが、小さな物語が歴史そのものなのです。

このドラマは前に進む力を与えてくれるものでした。