コラム
コラム
2020/3/4
1746    ヒットを打て

新聞のコラムに次のような文章がありました。

コーチが打者にこう声をかけたとする。「ヒットを打て」。どう評価すべきか。臨床心理学者で文化庁長官も務めた河合隼雄さん自書で断じた。「己を賭けることもなく、責任を取る気もなく、100パーセント正しいことを言うだけで、人の役に立とうとするのは虫が良すぎる(心の処方箋)」
(出典:読売新聞。令和2年2月28日、夕刊)

常に心掛けておくべき心構えだと思います。社会は正しいことを言うべきですが、責任を取る気がないのに、行動することもしないのに、人の役に立とうとすることは虫が良すぎるということを。人に言うからには自らの行動が伴うべきです。陽明学で言う「知行合一」を実践したいと思います。

参考までに知行合一とは「学ぶことは行うこととは別のことではなく、全く一体のことでなければならないと」と解釈されています。

昔から言われているように、言うことは簡単ですが行動することは難しいことなのです。特に情報社会において「知ること」は容易いことですが、知って行動が伴わないのは、知らないのと同じだということになります。知識は行動するためにある。勿論、行動することは難しいことなので、誰にでもできるものではありません。まして責任を取ること覚悟を持って行動することは簡単ではありまん。

せめて私達がすべきことは、責任を持って行動している人を見守ることです。最初からやる気をそぐような批判をすることや、自分が求めている結果と違う場合は容赦なく批判するなどの発言は慎みたいと思うのです。

責任を持って発言をする。そして行動している人は、それほど多く存在していないのです。

最初の事例の「ヒットを打て」は誰にでも言えます。でもヒットが打てる確率は4割もないのです。その打席で、偶然ヒットを打てるかも知れませんが、社会は偶然に賭けるべきものではありません。事前に分析を行い、必要な知識を得て、ある程度の勝算の裏付けを持って行動に移しているのです。ある日突然、何も考えていないことを行動に移しているのではないのです。

行動に至る過程や考え、思いを知らない人は、その行動が表面化した時に「もっと考えて行動しなければ」「こんな行動は間違っている」などの批判をすることがあります。しかし行動を起こした本人は考えて、悩んで、相談して、また考えて、悩んで、覚悟を決めて決断をしてから行動に移しているのです。

責任を持って行動を起こした人がいれば、その最初の一歩を踏み出す勇気を称えたいと思います。批判はその人の行動にブレーキをかける作用があります。勇気を削り始める作用もあります。その結果、成しえたかもしれない結果を消してしまうこともあるのです。責任を持って発言を行い、行動に移した人が社会に与えるべきものを消し去るかも知れないのです。

無責任な発言は責任ある覚悟と行動を凌駕することがあります。責任を取らないからどんなことでも言えるからです。

責任を持って発言をしている。覚悟を決めて行動をしている。そんな人が周囲にいれば応援することが私達の役割だと思います。