コラム
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2018/5/7
1711    最も幸せな時間

シアトルマリナーズのイチロー選手が、球団の会長付特別補佐に就任すると決まった時の5月4日の記者会見が感動です。

「この日が来る時は、ボクは辞めるときだと思っていました。その覚悟はありました。ただ、こういう提案がチームからありまして、決まってから二か月弱ぐらいの時間でしたけど、この時間はボクの18年の中で最も幸せな二か月だったと思います」。

そして「マリナーズと契約してから今日まで、毎日が僕にとってはギフトを贈られているようなもので本当にハッピーでした。今日もそうです。これが最後ではない、ということをお伝えする日になるわけですから。とにかくハッピーで、毎日セーフコ・フィールドに来る家から球場までの道のり、帰り道、ユニフォームを着ていられる時間、毎日かみしめていました」と話しています。

メジャーリーグに移籍してから数々の実績やプレイをしてきましたが、その中で試合に出られなくなる日に至る決断をするまでの二か月が「最も幸せな二か月だった」と言えるのですから、とても強い精神力と「やりきったから後悔はない。しかし新しい挑戦が待ち構えている」という覚悟を示すものだと思います。

「最も幸せな○か月」という時間を過ごし、それを感じられる人はそれほど多くないと思います。しかもイチロー選手が「幸せ」と感じている瞬間は最高のプレイをした時ではなく、お客さんの歓声に包まれている瞬間でもなく、その二か月は「毎日セーフコ・フィールドに来る家から球場までの道のり、帰り道、ユニフォームを着ていられる時間」なのですから驚きです。ここが私達にも感じることができることなので、大事なところです。

幸せな時間は、「セーフコ・フィールドに向かう道のり」、「球場からの帰り道」、「ユニフォームを着ていられる時間」だということです。

一般的な日常の姿に置き換えると次のようになります。

・「仕事に向かうための会社までの道のり」。好きなことをやれることに喜びを感じられること。毎日、好きなことができること。朝、今日一日ワクワクできるものがあると思えることがあること幸せだということです。

・「仕事を終えての帰り道」。今日も好きなことに携われたという喜び。その日の仕事の結果が良くても良くなくても、それは幸せとは関係のないもので、全力を尽くしたことに浸れる時間を感じられることが幸せだということです。

・「スーツ、作業着を着ていられる時間」。スーツに着替える時、「今日休みたいな」、「今日のプレゼンを担当するのは嫌だな」と思うのではなく、「今日も自分に任されている役割がある」、「人前でプレゼンできるような緊張する場面を任されているのはやりがいがある」と思えることが幸せなことなのです。何も起きない一日よりも、緊張感がある、プレッシャーを感じるなど何かが起きる一日の方が、やりがいがあり幸せだと思います。

そして18年間の現役生活よりも、それを終えようとしている時が最も幸せだと感じられることは「やりきった」ということなので素晴らしいことだと思います。

最も幸せだと感じられる時を持ちたいと思いますし、その当たり前の時間を「幸せだ」と感じたいものです。