コラム
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2016/5/26
1647    物語があること

ライオンズクラブ国際協会335B地区年次大会で感動がありました。中村ガバナーの出身校である大阪府立大手前高校の吹奏楽部の生徒がアトラクションで演奏をしてくれたことがそれです。最初は知らない大阪の高校の高校生の吹奏楽演奏だと思って聴いていたのですが、吹奏楽部の担当の先生の話を聞いて、その後の演奏を心から聴くことになりました。その話は次のようなものです。

今回のライオンズクラブの地区大会会場である大阪国際会議場の舞台は、大阪府下の吹奏楽部が目指している高校野球の甲子園のような場所だというのです。吹奏楽部の大阪大会は、大阪府を複数のブロックに分けて予選を行います。予選を勝ち抜いた吹奏楽部が大阪国際会議場の舞台で演奏することができるのです。大手前高校の吹奏楽部は平成27年の大会で国際会議場を目指しましたが、同校のある北地区予選で敗退し、この舞台で演奏することはできませんでした。
そのため吹奏楽部員が目指した、彼、彼女たちの夢の舞台であった大阪国際会議場で演奏できなかったのです。

同校の高校三年生の吹奏楽部員は、平成28年4月29日の演奏を最後に引退することになっています。生徒が目指した夢の舞台に今日、立って演奏することができたのです。この国際会議場の舞台に立つことは誰でもできることではありません。高校三年生にとっては、吹奏楽部の思い出としていつまでも心に残る舞台になりました。

当初、担当の先生は「とても大阪国際会議場で演奏できる実力はない。人前で下手な演奏を披露することはできない」と思って出演を断ったのです。しかし同校OBの中村ガバナーが、「下手でも良いのです。大手前高校の吹奏楽部に国際会議場で演奏して欲しいんだ」という言葉が大手前高校の先生と生徒の気持を動かして、今日の演奏会が実現したのです。

高校生が今回の吹奏楽の演奏を楽しんでいることが聴いていて分かりました。楽しんでいる理由は、彼らが目指した夢舞台での演奏だったからです。彼らが楽しみながら演奏をしている音楽を聴く立場の私達も、この物語を聞いたことから感動と共に楽しみました。

大手前高校が舞台に登場した時の会場の雰囲気は、「時間があるので聴こうか」というような空気がありました。しかし数曲演奏した途中、担当の先生が「今回の演奏に至った理由を少し説明させてください」と、一旦演奏を休憩して先に述べたような物語を話してくれました。その後の演奏は、吹奏楽部員と会場を巻き込んだ素晴らしいものになったのは言うまでもありません。

大手前高校の吹奏楽部の演奏は、前半と後半の違いはありません。しかし会場内の熱気は違い、拍手の音や会場の空気も全く違ったものになりました。前半と後半で違ったことは、吹奏楽部がこの舞台に立つまでの物語を会場にいる私達が知ったことだけです。

このように物語があると身近に感じ応援したくなるのです。応援したいと思うと私達はその観点で音楽を聴くので、物語の登場人物に共感し感動することになります。

ここで学びがあります。私達の仕事にも、政策にも、訴えるべきことにも、物語があると相手に共感してもらえ、感動を呼ぶことになるということです。努力は人前で話すべきことではありませんが、物語にして話すことはとても大事なことだと思います。