コラム
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2016/3/30
1643    人生を失わないように

ある人が寓話を披露してくれました。

今から50年前。1人の若者が働いてお金を得ました。それまで出来なかったことをすることができたので、「お金があれば何でもできる」と思いました。

それから故郷を飛び出して一所懸命働きました。お金を得るために、少しでも賃金の高い仕事を求めて全国を渡り歩いたのです。休むことなく遊ぶことなく、友人と話すこともなく、自分でやりたいことをしようともしないで働き続けたのです。

年長者がアドバイスをしました。「少しはオフの時間も取った方が良いですよ」。しかし働くことを選びました。

職場の同僚が言いました。「今度の休みに遊びに行こう」。遊びに行くのではなくて休みの日は別のアルバイトを行いました。

「気分転換に旅行に行こうよ」と誘われても、「旅行でお金を使うのは無駄」と思い断りました。

「仕事の合間に本を読むと世界が広がるよ」と先輩が話しても、「本を読んでも何もならない。本なんかにお金使うのはもったいない」と思いました。

友人も恋人もいなくても、勉強もしなくても仕事をしてお金を貯めることを人生の最優先目標にしていたのです。

それは「将来やりたいことをするために、今働いてお金を貯めなければ。お金があれば将来、やりたいことができるから」と思ってのことでした。

若者はずっと働いて、働いて、お金が貯まっていきました。やがて1億円という大金を貯めることができました。

「これでもう働かなくても大丈夫だろう」と思い、「これからやりたいことをやろう」と思いました。

そして故郷に帰ったのです。若者は「大きな家を建てよう」、「故郷の友人たちに言おう。君たちも遊んでいないで働いてお金を貯めたら。働かないで遊んでいると人生が無駄になるよ」、「これからやりたいことをやろう」と思ったのです。

故郷に帰ると景色は変わり、かつての友人達は一人もいませんでした。故郷の友人達が駆け寄って「お金持ちになったんだって」、「故郷の誇りだよ」、「みんな君の帰りを待っていたんだよ」などと話してくれると思っていたけれど、誰からも話し掛けられませんでした。

お金を得たけれど、たったひとつ問題がありました。

20歳だった若者は50年後のその時、70歳になっていたのです。そうです。この若者が失ったものがありました。それは「人生そのもの」だったのです。

若者は、お金を得たけれど人生は取り戻せないことに気付いたのです。

人生で大切なモノは人生そのものなのです。仕事もお金も大切ですが、人生そのものが最も大切なのです。

人生とは、やりたいことをやれる時にやること。笑顔に包まれた毎日を過ごすこと。どきどきする感じを持っていること。会いたい人がいることなどが人生です。

「人生を失わないようにして下さい」。こんなアドバイスをいだきました。