コラム
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2016/2/29
1638    コントロールとプレッシャー
EYE西村欣也

朝日新聞記者の西村欣也さんの「EYE西村欣也」が最終回(平成28年2月27日)を迎えました。定年だそうです。ここで三人のアスリートの言葉が書かれています。

【コントロールできないことにこだわらない。】

イチロー選手。イチロー選手が首位打者争いをしていた時、ライバルのその日の成績を伝えた。彼の言葉は「愚問ですね。彼の打率は僕にはコントロールできませんから」。

松井秀喜選手。ヤンキース一年目に成績が上がらない時、メディアの批判に晒されていました、そこで「気にならないか」と松井に聞いたそうです。「気にならないですよ。だって彼らの書く物は僕にコントロールできないもの」。

自分がコントロールできるものとできないものを分けて、コントロールできないものに関心を持たないことが大事なことで、西村さんは「これは日常生活にも取り入れられる生き方だと思った」と記しています。

誰でも、人から言われたことや自分への評価などを気にします。その評価を変えようとしますが、その対象はコントロールできないものであれば、コントロールできないことに自分が悩むだけです。やるべきことは自分がコントロールできることに視点を当てて、そのことに力を尽くすことです。

【プレッシャーからの解放】

スピードスケートの清水宏保選手。「試合前に大の字になって寝て、幽体離脱するように自分を上にあげる。できれは宇宙まで上げる。そうすればちっぽけな自分が見える。地球ではあらゆるところで戦争が起こっている。自分はこんな小さなリンクで悩んでいる。自らを俯瞰的に見ることで、プレッシャーから解放されるんです。あとはミュージシャンがライブを楽しむように自分のレースを楽しめばいい」。

地球の視点、宇宙の視点から見ると人間の存在は実に小さなものです。悩みも不安もそこからは見えませんし、感じることもありません。ただ人間が生きている。それが地球や宇宙の視点だと思います。

人から見られている、どんな発言をするか注目されている。だから賢いことを言わなければという思いがプレッシャーを呼び覚ませます。そう、プレッシャーとは人から賢く見られたい、実際の自分よりも良く見られたい、評価されたいと言う意識が働いているからです。

また自分が存在している職場が全てで、今立っているポジションを守ろうと思い込んでしまうと、人は賢くしてその場所を守らなければと思い込むので、愚作を弄したり、人を陥れようとしたり、プレッシャーを感じることになります。

現在、自分が挑んでいることに全力を尽くして成長を遂げる。そして舞台に立つ。目指してきた舞台に立てた時には、ただ自分が主役のライブを楽しめば良いのです。何もプレッシャーを恐れ逃げるために、その場所を目指してきたのではないのですから。

プレッシャーは自分の目指してきたことを実現できる準備が整ったから襲ってきます。プレッシャーは目指してきた舞台に立っているから感じるのです。慣れた日常生活でプレッシャーを感じないことが、プレッシャーは、今、自分が人生の特別な舞台に立っていることを教えてくれています。