コラム
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2015/2/24
1580    心の痛み

楽しみにしている新聞記事がひとつだけあります。毎日新聞夕刊に掲載されている「毎日ぽこあぽこ」がそうです。平成27年2月23日に掲載された記事に心が温まりました。少し長くなりますが記事から引用させていただきます。

「今が好きだ。過去が重なって今がある。未来は今と連結している。そう考えると、全部が今とつながっている。今が一番フレッシュで、生きることや活きることができるのは今だけだということがわかる。だから私は今がどんな状態のときも、過去に戻りたいなんてほとんど思ったことがない。でもたった一度だけも戻りたい過去の瞬間がある。小学校の時に、学校から帰ってきたあの日だ。 〜中略〜 私は学校から帰ると、おばあちゃんはとてもうれしそうにこう言った。「おかえり、炊事場を見て、何か変わったんわかる?」。その時、私はわからなかった。後から母に聞くと、その日、おばあちゃんは一日かけて炊事場の壁を全部磨いていたらしい。「え?わからん」と私が答えた時の祖母の顔・・・。「わからん」なんて四文字で済ませた私はばかだ。もし今、過去に戻れるなら、「壁がめっちゃきれいになっている。おばあちゃんありがとう」と大きな声で答えたい。」

とても素敵な物語だと思います。きっと誰でも小学生の頃の過去の出来事で心を痛めることがあると思いますが、この小さな物語は何故か温かい気持ちにさせてくれます。過去は過去ですが今とつながっていて、過去の出来事を大切にしている人が今を活き活きと生きられるのです。誰でも小学生の時の過去の小さな心の傷は時間の経過と共に忘れてしまっていると思いますが、時々、思い出すことがあります。

大人になった今だから分かり思うのです。「あの時のお母さんの寂しそうな顔は、きっと自分の発言のせいだ。もっと気持ちを分かってあげたら良かった」と思うのです。小さな出来事ですから、母親はもう忘れてしまっていると思いますが、思い出すと心が痛むことがあります。

でも自分が感じる心の痛みは、きっと母親も見抜いていて、そっとしておいてくれたように思います。私達は小さな心の痛みを積み重ねて大人になっているのです。過去の心の痛みは、今になると優しさ強さという性質に姿を変えてくれていると思うのです。小さな心の痛みは時間が化学変化を起こさせて、今の自分の大切なものへと変化させて、心の中に留まっているように思います。小さな心の痛みは、人を思いやるという大きな優しさに変化していると思うのです。

子ども達がその時は分からなくても、後になって気づき、子どもが大人になった時、少し心に痛みを感じる。しかし優しい思い出として、優しかったおばあちゃんや母親のことを思い出すことを大人は知っているのです。もしかしたら化学変化はおばあちゃんや母親の子どもを思う気持ちが媒介して心の痛みを優しさに変化させてくれているかも知れません。

大人なっている今、小さな心の痛みを感じることは少なくなっています。それは人に優しくすることを心が分かっていて、自分の言葉で相手の心が傷つかないように言葉を発しているからです。心の傷ついた経験が多い人ほど人に優しくできる。そう思うと、戻りたい過去も今に続いているから、きっとあの時の人達は子どもだった自分を許し、優しく包んでくれていると思うのです。