コラム
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2015/1/13
1569    人生の後半戦

現在87歳で日頃からお世話になっているHさんを訪ねました。訪問したところ元気な笑顔で迎えてくれました。部屋に案内してくれたので懇談していると、壁に張り紙があることに気付きました。62歳から82歳まで、人生の後半戦の歩みを書いて張り出していたのです。「私の老後人生の歩み」と題して、その目的を「社会奉仕ボランティア活動である」と明確にしています。現役時代を過ごした後の人生を社会貢献活動に費やしたのです。その結果社会保険庁長官賞を授与されるなど、この20年間に結果を残しています。高齢者が社会で楽しく暮らしていけることを念頭に、年金受給者を対象に組織を結成することや、楽しいイベントを開催しています。私もそのイベントであるゲートゴルフに参加させてもらったことがありますが、活き活きとした高齢者の笑顔が印象に残っています。人と接す機会があること、地域社会に存在する場所があること、参加することや結果を出すことで認められること、練習をして向上できることなどが生き甲斐となります。

人生の後半戦はこれらのことを失いがちですが、Hさんはしっかりと目的意識を持った生活ができるようなしくみを作り、周囲の年金受給者の皆さんを支えてきたのです。そんなHさんも87歳となり自分で企画作りや動き回ることができなくなりました。人生の後半戦を終えて、今は延長戦へと舞台を移しています。延長戦は自分のリズムでゆったりとした暮らしをしているように思います。

スポーツで言うと前半戦と後半戦は勝負に拘りますが、延長戦はプレッシャーを感じますが、それよりも楽しむことが大切です。Hさんは楽しみながら延長戦を生きられる人生、そんな生き方を選択しているように思います。

張り紙を眺めながら、人生は自分が演じようと思った通りに舞台が用意されているから楽しいものだと思いました。そして演じ切ることが人生なんだとも思います。舞台の用意はたった一度だけ、やり直しは利かないのです。覚悟を決めて選択した人生を生きる以外にないのです。

人生を楽しむことができない人は、「これは自分のやりたい仕事ではない」、「自分に相応しいもっと良い場所があるはずだ」、「自分はこんなところにいる人間ではない」など不満を言っている人です。自分のやりたい仕事、相応しい場所は自分がいるここだということを認めないでいる人は、何も達成できない悲しい人です。どんな仕事でも外から見ているのと実際やってみるのとでは全く違います。

思い描いた理想は自分が思っているだけのものなので現実に求めるものではないかも知りません。今を充実して生きている人は理想を求めても大丈夫ですが、現実に不満を持っている人が理想を求めても、また同じ自分の能力が発揮できない厳しい現実が待っているだけです。

Hさんと人生の後半戦の話をしていると、瞬く間に時間が経過していきました。こんな時間が人生を充実させてくれると感じました。

追伸。もうひとつ驚くことがありました。机に日記があったので尋ねてみると、「日記は毎日書いているよ」という返事がありました。書くことでその日を振り返り、出来事を記憶に定着させるので日々成長できます。87歳にして日記をつけている姿勢に学べます。