コラム
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2014/9/25
1535    当選請負人千堂タマキ

「当選請負人千堂タマキ」(著者は渡辺容子氏。小学館文庫)は選挙プランナーの活躍を描いています。この中でドイツのビスマルク氏の言葉が出てきます。

ビスマルク氏の有名な言葉「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」ですが、本当は「愚者だけが経験から学ぶと信じている。私はむしろ最初から自分の誤りを避けるため、他人の経験から学ぶのを好む」と直訳されるものだそうです。

著者の渡辺氏は、「自分一人の経験には限界がある。たった一度の成功や勝利を経験して得意になり、次も成功するなんて思ったら、絶対に失敗する。『歴史に学ぶ』『他人の経験から学ぶ』というのは、言い換えるなら『読書をしなさい』『人の話を謙虚に聞きなさい』といったことを意味しているそうだ」と続けます。

とても分かり易い解説です。何故なら「歴史に学ぶ」「他人の経験から学ぶ」ということは誰でも知っていて、そうしなければと思っていることですが、実践できないのはどうしたら良いか分からないからです。しかし「読書をしなさい」だとか「人の話を謙虚に聞きなさい」と言われると、簡単にできることにブレイクされています。読書をすることは自分の意思で今日からでもできるものです。また他人の話を謙虚に聞くことが他人の貴重な経験を自分のモノにするために必要なことだと分かれば、他人の話に関心を持って寄り添うことができます。歴史から学ぶことも他人から学ぶことは容易いことだったのです。

この著書から学べる記述は他にもあります。

「選挙プランナーに求められる一番の資質は、問題の解決力ではなく、問題を発見する能力なのです。問題を発見するときに一番役立つのはリサーチです。有体にいえば、『足』と『耳』ですね。これは選挙プランナーに限らず、本来、政治家や企業の幹部にも必要とされる重要な資質ではないでしょうか」という、主人公の千堂タマキからの問い掛けがあります。

現場に答えがあると言いますが、現場に行っても答えを発見する能力がなければ何も見つかりません。見て回るだけで県政や市政の課題やお客さんが求めるものを発見することはできません。現場で問題を発見するために必要なことは、人と会って話を聴くことです。現場で人と会い、その人達と話をする中から情報を得ることが問題発見能力なのです。課題を持って現場に入り、現場で人から話を聴くことで問題を見つけることができるのです。

地方の政治は現場の意見がとても大事です。現場で意見を聴かせてもらい問題を把握し、その後、その問題について調査を行い、問題を解決するために行動や提言をすることにつなげていくことが役割だからです。現場で問題のないことを議会で取り上げても意味はありません。現場で問題になっていることを取り上げて、解決する方法を議論することが地方議員の最大の役割だと認識しています。

皆さんの意見を聴かせていただき、現場に存在している問題を把握し、それが問題になっている根拠を示しながら議会で解決に向かわせることが地方議員として必要な活動です。

現場に問題がなければ議会で取り上げる必要性はありません。現場で問題になっていて、その個人固有のものではなく公共性のあるものであれば、問題解決に向かわなければなりません。読書をすること、人の話を謙虚に聴くこと、問題発見力。日常で意識したいものです。