コラム
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2014/9/24
1534    徳をいただく

邦画のハッピーフライトの一場面を観ました。飛行機の座席がオーバーブッキングしたので四人のお客さんにグレードアップを依頼することになりました。地上乗務員がロビーを見渡して、どのお客さんに席の変更を依頼するかを決めようとしていました。最初に家族連れの三人に目星をつけアップグレードを依頼して快諾をしてもらいました。

続けて何人かの表情と行動を見て一人に決めました。地上乗務員は「あの人なら紳士的ですし、私達の話を聞いてくれると思うから大丈夫だと思います」という判断を下し、その男性に座席の変更を依頼します。ここに学ぶべきことがあります。

人の心は顔や表情、行動に表れるということです。自分で意識していないけれど、他人から見た姿が本来の自分の姿なのです。意識していない自分が社会や他人から評価されているのです。しかも自分が知らないところで。良い表情、親しみのある姿をしている人は他人から話をしてもらいやすいのです。良い人格者は、それだけで素敵な話に遭遇することが多いと思います。

やさしい顔をしている人はそれだけで得をしています。難しい顔をしている人はそれだけで損をしています。心は見えないけれども表情は見ることができます。このように表情は内心が表れているものだから、他人は人を表情で判断することになります。表情が大事なのはそのまま心が表れるからです。

私達の周囲には話し掛け易い人と話し掛け難い人がいます。何かを相談ようと思った時は、話し掛け易い人にするのは当たり前の選択です。話し掛け易い人はそれだけて得をしていることになります。人から話をしてもらえる人はそれだけで信頼が集まりますし、情報も集まります。このように人は徳を運んでくれるのです。

人はどれだけ多くの徳をいただけるのかが生きる上での財産になりますし、将来の宝物になります。人からいただいた徳は見えないものですが、社会という器に蓄積されています。自分には見えないけれど周囲からは徳が見えるのだと思います。徳が積み重なった人は社会から信頼を得ています。徳こそが社会という器の貯金であり、意識して引き出さなくても自然と必要な場面で使わせてもらえるのです。

例えば大切な交渉の場面で同意が得られること。これは社会からの信頼という徳があるからです。多くの人から相談の依頼を受けられること。この人であれば話をしても大丈夫だという安心感があること。

多くの人から与えられた徳は、いかなる場面においても威力を発揮してくれるのです。これまで行動してきた中で戴いた徳という見えないものが私達を守ってくれるのです。見えているものだけを得たとしても、その時はうまくいく場合がありますが、長い時間軸で捉えると徳がある人の方がうまく行くと思います。

繰り返しますが徳とは自分で得られるものではなくて、全て人からいただいたものです。一人の人から一つの徳をいただける。また別の人からも一つの徳をいただけるのです。ふたつの徳を得ようとしたら、二人の人を支援することや困っていることの相談に乗る必要があります。百の徳をいただこうとしたら百人の人を応援する必要があります。たくさんの徳をいただくことは簡単なことではありませんが、とても価値のあることです。