コラム
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2014/9/8
1526    心の距離

経験豊富なYさんから仕事の流儀を教えてもらいました。仕事は全て人に掛かっているので、どれだけ人付き合いができるかどうかがポイントなります。無理を頼める人をたくさん作っておくことが仕事の流儀です。無理を聞いてもらえる人を作るためには、心の距離を縮めておくことが必要です。心に距離があったり、壁があるようでは、無理を聞いてもらえる関係には至っていません。

心の距離を縮めることは簡単なようで簡単ではありません。人を介して一度紹介してもらうだけで、直ぐに携帯電話でお願いをしてくる人がいます。心の距離を縮める行動をしないで、電話で依頼しても聞いてもらえることはありません。電話で依頼して聞いてもらえるのは、人間関係ができている関係においてのみ成立します。一度会っただけなのに、電話で無理な依頼をしても聞いてもらえません。紹介してもらった後は、無理を聞いてもらえる関係作りを自分でしなければなりません。

異業種交流会などで名刺交換をしただけで、もう人脈になったと思う人がいます。たった一度、数日前に会っただけなのに、誰かと話をしている時に「私もよく知っていますよ」という人がいます。「あの人もこの人も、誰でも知っている」と言う人がいますが、今までの経験から、そんなことを言う人が深い付き合いをしていたことはありません。むしろ良い人脈を有している人は、「あの人を知っている」と言うことは少ないのです。いざという時のために備えておくのが人脈ですから、特別に今は用件もないのに簡単にあちらこちらに言う人はいません。

ところで間違い易いのは、食事に誘って応じてもらえたら、もう大丈夫だと思うことです。食事を共にすることで心の距離は縮まりますが、会食はあくまでも手段であって目的ではありません。食事を目的としてしまうと、そこから先に進まなくなります。「一度食事を共にしたから、無理を聞いてくれる関係ができた」と思うことは誤りです。

「一度食事を共にしたから、ここから人間関係を作るスタートだ」と思う方が正しいのです。

出会いを作ること、出会いを発展させるために食事をすることなどは手段であって目的ではありません。目的は仕事に役立つ人脈を作ることにあります。そのためには自分の頼みごとをするのではなくて、相手の依頼を引き受けて、それが成就するための行動を起こすことです。まずは相手の依頼や要望を聞かせてもらえる立場でいることです。相手が信頼してくれるから依頼をしてくれるのであって、「この人に頼んでも無理だな」と思われると、依頼事は来ません。

ですから自分が頼まれる立場にいることが人脈作りにおいて先ず行うべきことであって、自分が依頼するのはそこから後の話です。一緒に食事をする、話をする、雑談する時間を共有できる関係になる、気軽に電話をしてもらえる関係になるというステップを踏んで、心の距離が縮まっていくのです。

自分が人から頼み事を受けられる人になり、心の距離を取り除くことができたら、やっと無理を聞いてもらえる人脈になります。相手の無理な頼み事を聞いて、適えられるように行動をすること。実現できなくても、そのできない理由を説明できるなら次につながるので大丈夫です。心の距離を縮めるために行動をすることで、それが人脈へとつながるのです。