コラム
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2014/8/5
1512    昭和36年10月2日

劇団ひとりの「青天の霹靂」を読みました。何をしても上手くいかない主人公が「生まれてこなかったら良かった」と思い、自分を誕生させた父親を恨み、生まれた時いなかった母親に対して「生んでくれなければ良かったのに」と思います。ある日、雷に打たれ時代を遡り、主人公が生まれる前にタイムスリップします。

そこで出会ったのが自分の父親。そして母親に出会い、出生の秘密を知ります。主人公を身篭った母親は結核に侵されていました。結核治療のための薬を飲むと体内の子どもは生まれなくなります。結核治療をしなければ自分の命が無くなります。母親は自分の命か、まだ見ていないこれから生まれようとする子どもの命かの選択を迫られます。医師の問い掛けに対して母親は迷うことなく「子どもを生みます」と言い放ち、結核治療を拒みます。

「生まれてこなければ良かった」、「生んでくれなければ良かった」と思って生きていた主人公は、母親の覚悟と母親が自分の命と引き換えに生んでくれたことを知ります。生まれた時、母親がいなかったのは、自分の命を賭けて主人公を生んだからです。父親からは「母親は俺たちを捨てて出て行った」と伝えていましたが、タイムスリップをして真実を知りました。

主人公の父親は、母親が死んだのはお前が生まれたからだと思わせたくなかったから嘘をついたのです。母親が命を賭けて生んでくれたことに感謝し、それまで恨んでいたことを過去に葬ってしまいます。

母親の愛を知った主人公の物語に涙が零れてきます。全ての命は、命を賭けてくれた人がいるから誕生しているのです。私達は成長して一人歩きを始めると、そんな母親が命を賭けてくれた命の物語を忘れてしまいます。ここに存在しているのは母親が生んでくれたからだという物語を忘れてしまうのです。大事な大事な物語なのに、この命の主人公である自分が忘れてしまっているのです。今、生まれてきたことを母親に聞かなければ、この誕生の物語は永遠に知られることなく消えてしまいます。

昭和36年10月2日はどんな日だったのか調べてみました。この日の大きな出来事は、大鵬と柏戸が同時に横綱に昇進したことでした。

その他に時代が分かる背景には次のようなものがあります。

  • ケネディがアメリカ大統領就任演説をした日。あの「国が何をしてくれるかではなく」の演説です。1月20日。
  • ガガーリンが世界初の有人宇宙飛行から帰還した日。「地球は青かった」の台詞が今も残っています。4月12日。
  • 坂本九の「上を向いて歩こう」がリリースされました。10月15日。
  • 巨人が4勝2敗で南海を破り6年ぶり5回目の日本一になっています。11月1日。
  • ヘーシンクが外国人として初の柔道世界一になっています。12月2日。

ケネディ大統領、ガガーリン、坂本九、へーシングが活躍したのが1961年だったのです。そして誕生日は、大相撲の大鵬と柏戸が横綱に同時昇進した日だったことを知りました。そんな激動の時代に、この世に命を誕生させてくれたのです。

その時から時間は52年9ヶ月が経過しています。永い命の物語を綴ってきました。生んでくれたことに感謝しています。良い人生を歩かなければ申し訳ないと感じています。