コラム
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2014/7/29
1507    使命

政治に関わる人にとって大切な話です。大きな夢を描き語ることは必要ですが、現実は夢のような話ばかりではありません。和歌山市の場合、中心市街地が衰退していますから再生を図ることが最大の課題です。平成26年8月末には南海電鉄和歌山市駅にある高島屋が撤退しますし、600年も続いた駿河屋も姿を消しています。歴史も現代も消え衰退していく姿をこれ以上見たくはありません。

大きな都市計画を描き実行していく力量が必要ですが、同じ時期、和歌山県庁の隣で営業している果物屋さんがお店を閉じることになりました。県庁の隣のお店が閉まることの意味を考えなければなりません。

ある代議士がこの直面した事実について言及しています。

「和歌山市政を語る者は、この小さな事実に反応しなければなりません。少しの時間でよいからお店を訪ねて、どうしてお店を閉じるのかお店の人の話を聞くべきです。そこから市政に必要なものが見えてくると思います」という話です。

県庁の隣で営業しているお店の商売が成り立たないのであれば、和歌山県中心市街地の力の衰退です。県庁の隣のお店が売上不振で閉店するということであれば、何としても対策を講じなければなりません。これ以上衰退を示す事実はありません。県庁所在地の隣にある場所で商売が成り立たないところは、全国どこにもないと思います。

もしお店の人の個人的理由、高齢化や後継者がいないことであれば、まだ立ち直ることはできますが、商売が成り立たないという理由であれば激震です。

この事情を確かめることが政治に関わる者の使命です。小さな動き、小さな声に気付いて、現地に走って声を聞くことが活動の原点です。事情を確認して行政として対応可能かどうかを検討すること。そして県庁の隣という一等地で商売が成り立たないのであれば、町全体の問題として考える必要があります。一等地の固定資産税が高いのは、ここで商売をすると利益を上げられるという価値がその土地にあるからです。高い税金を支払っているのに対して売り上げが伴わないことは、土地としての価値を失わせることになります。

同じような視点で見ると、和歌山市内の駅周辺や中心市街地の空き地が駐車場になっている割合が多いことに気付きます。商業地の場合、本来は収益物件にすることで収益が上げられるのですが、和歌山市はビルを建設しても収益が上げられないと市場が評価していることを示しています。ですから市場は、通勤する人のための駐車場にすることで収益が上げられると判断しているのです。中心市街地に駐車場は必要ですが、古くなったビルが建て替えられることなく駐車場になっていくのはやるせない気持ちになります。都市としての価値が低下していることを、現実の姿で示されているからです。

中心市街地は土地に価値があるから人が集まり交流するのです。人が交流することで商売が成り立ち、利益が上がり発展していく循環ができるのです。この循環がなければ中心市街地としての価値はありません。単に利便性が良い場所と言うだけですから、ここから都市の再生は図れません。

人の動き、お店の動き、空き地の利用形態などの変化に気付き、その小さな変化の真相を確認して対応していくことが政治に関わる者の使命だと意識させてくれる話を聞きました。