コラム
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2014/7/16
1499    一軍枠

和歌山県でお三味線を教えているH先生が国立劇場で演奏会に参加してきました。「国立での演奏を目指していたので夢が実現しました」と笑顔で話してくれました。国立劇場での演奏はとても気持ちの良いものだったそうです。

国立の舞台に立つためには、全国でたくさんいるそれぞれの地域のお三味線の師匠の中から抜きん出る必要があります。つまり一軍枠に入っておくことが、国立劇場の舞台に立つための最低条件なのです。一軍に入っていなければ、家元からお呼びが掛かることはありませんから、まずは一軍枠に入るための実力を身に付けることが必要となります。どの分野でも同じですが、まずは一軍枠に入ることを目指します。この枠に入っておくことが、必要な時にお呼びが掛かるための条件ですし、目指すべきモノに近づくために必要な場所です。

つまり結果よりも今が大事だと伝えてくれました。結果は今の努力があることが前提です。今の努力なしに結果が伴うことはないのです。

結果は今の努力に掛かっていて、結果が出るか出ないかは、やつてみなければ分かりません。やってみなければ分からなければ、それをやるべきです。そして目指していた国立劇場の舞台に立つと、不思議なことにそこで終わりではなくて次に目指すべきものを見させてくれたそうです。夢を実現した後には次の夢を見つけることができたのです。その夢とは、お弟子さん達にも国立劇場の舞台に立ってもらいたいということです。この感動を体験してもらいたい。そのために厳しいお稽古をして舞台に立つために一軍枠に入れたいという目標ができたのです。

一軍枠に入り国立劇場の舞台に立つと、ライバルと競い合うのではなくて後継者を育成することが大切な役割であることを認識することになります。大舞台に立つということは家元に認められることですから、家元から認められるようなお弟子さんを育成することを次の目標に定めています。

ところで一軍枠に入るために必要な条件を聞かせてもらいました。それは人柄、技術、精神力、人脈、そして金脈の5つの条件を揃えることです。技術は必要なことに異論はありません。下手では話しになりません。では技術力があっても人柄が良くなければ一軍に入れません。同じレベルの実力であれば人柄の良い人を選ぶのは当然のことだからです。「人柄の良い人の演奏と、人柄の悪い人の演奏のどちらを聴きたいですか」という質問があれば、人柄の良い人を応援したいと思うので「人柄の良い人の演奏を聴きたい」と思うものです。

人柄の良い人は応援したくなりますが、そうでない人の応援はしたいとは思いません。そして精神力とは、大舞台に立った時に緊張しないで演奏できる力のことです。一流のお客さんが演奏を聴いていますから「緊張して実力が発揮できなかった」では済まされません。家元の顔に泥を塗ることになりますから強い精神力が求められます。

そして人脈は自分を認めてくれる人がいること、金脈は資金力を有していることです。人とお金が、世の中に引っ張り出してくれるために必要なものの双璧です。あえて人脈と金脈と表現しますが、良い人脈と金脈を持つことが、社会に認められ活躍するために必要なものです。誰でも好きな分野で大舞台に立つことを目指しています。そのためにはまず一軍枠に入ることを目指すことから始める必要があります。