コラム
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2014/7/14
1498    不思議な出来事

不思議な話を聞かせてもらいました。福祉施設を訪問した時、ロビーにある応接や飾りを見ていたのですが、その中でレトロな置時計を見つけました。

「レトロな置時計ですね。今は珍しいものになりましたね」と話をしたところ、理事長から「あれは私の母親が使っていた時計なのですよ。実家にあったのですが長い間使っていなかったので動かなくなっていました。母親にこの福祉施設を見てもらおうと思ってロビーに設置したのです。そうしたら不思議なことが起きました。この置き時計が動き出したのです。それからずっと動いているのですよ」と話してくれました。

実に不思議な話ですが私は信じています。きっと娘である理事長が事業を始めたので心配していた母親が、自分の分身である置時計のことを娘に気付かせて、福祉施設のロビーに誘導したのです。そして娘を見守るために置時計に命を与えたのです。再び時を刻み始めた置時計は、母親が娘の仕事を見守り事業成功を見届けようとしているのだと思います。

レトロな置時計は母親の分身であり、愛する娘の事業がうまく行くように導いてくれていると思います。大切にしているものには持ち主の命が宿ります。それを引き継いで大切にしてくれる人を見守ってくれると思います。この場合、母親の置き時計が娘の近くにいることで、毎日娘が頑張っている姿を見ています。だから自分が見守っていることを娘に伝えるために、動き始めたのです。私には時計が動き始めた理由を他に考えられないのです。

大切にしていたものが自分の変わりになって愛する人を見守ってくれる。とても素敵なドラマだと思います。静かにいるだけでは分からないので、時を刻むことで母親が近くに存在していることを気付かせているのです。

もうひとつ母親が再び時計を動かせた理由があります。それは福祉施設に思いを賭けた娘の行動に感動したからだと思います。

理事長は入居してくれる皆さんが快適な高齢期を過ごしてもらうために機能性、デザイン性を追及して自ら設計しています。外装のレンガを夏の日、冬の日、雨の日にどんな状態になるかを見るために、モデルにした歴史的建築物に出掛けて外壁の状態を確認しています。自分の事業に情熱を燃やして、冬の寒い日も、雨の日も状態を確かめに出掛けていたのです。自分が気に入るものでなければ、入居者が気持ち良く、安心して暮らしてもらえないと思い、自分が入居したいと思うような施設作りに取り組んだのです。

きっと「もし母親に入居してもらうとしたら、こんな福祉施設でありたい」と思って設計、機材を取り入れた筈です。だから予算は当初予定していた額よりも二倍に膨らんでしまったと言います。それでも「これでやっと満足できたものになりました。自分が入りたいと思えるような施設と機能を持ったものになりました。スタッフも最高の人材に恵まれました」と話してくれました。「借金だけが膨らみました」と言うように、予算よりも幸せを優先させた建物となりました。

そんな思いが天国の母親のところに届き、自分の分身である置時計に命を吹き込んで、理事長と一緒にこの福祉施設で暮らしているのです。このような不思議な出来事と時々出会うことがあります。それは愛する人が愛する人を守るために起きている事象だと思うのです。そんな愛ある不思議な出来事に出会いたいと思います。