コラム
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2014/6/17
1480    春風広報マン

仁坂和歌山県知事が、故西口勇元和歌山県知事の追悼の言葉を平成26年6月県議会定例会初日で述べた中で、南紀熊野体験博のことを県政の功績として触れられました。熊野の自然をテーマパークに見立てた舞台設定、熊野古道が後に世界文化遺産に認定を受ける契機となった先見性と先進性、そしてオープンエリア型の博覧会という前例のない地方博を実施しようとした挑戦の心意気など、現在の和歌山県に受け継がれているものを全て表現した博覧会でした。

幸運なことに、南紀熊野体験博実行委員会に出向して広報出展部という立場で、博覧会に直接関らせてもらったことは幸せな記憶であり、やりとげた自信であり誇りとなっています。

平成11年に開催された熊博から平成26年の今日まで、既に15年の歳月が経過していますが、今も県政に輝きを放ち記憶されていることを嬉しく思った瞬間でした。あの時の熱い夏が蘇えると共に、それを後から振り返った「南紀熊野体験博後考記」のことを思い出しました。この「南紀熊野体験博後考記」は南紀熊野体験博実行委員会嶋田次長が博覧会から10年を記念して発刊してくれた記録誌です。懐かしくなって本棚から取り出して読んでみたところ、当時の思い出や実行委員会メンバーの手記などが掲載されていて、時間を忘れて読み終えてしまいました。そんな振り返れる記憶があることはとても幸せなことであり、人生の財産になっていることもまた幸せなことです。

その時というものが記憶にしまわれていて、何かのきっかけで蘇えるものであることは人生の宝物です。きっとそんな宝物をたくさん持っている人が幸せな人だと言えるのです。

ところで「南紀熊野体験博後考記」で嶋田さんは私のことを取り上げてくれています。ユーモアがありとても温かい一文なので紹介いたします。

タイトルは「春風広報マン」です。「まるで柳に風が吹くように、アッケラカンと飄々と、春のある日にやってきたのは、K電力会社からやってきたKだった。彼は大会社の広報担当の経験者で、文章を書くのも上手くて速く広報センス抜群だった。

あるとき、NHKの番組に博覧会のPRで出演したが、その解説は見事なもので職員の間で賞賛の的となった。特に、熊野古道の説明のくだりは、実際歩いたものしかできない迫真のものだった。あまりの素晴らしさに疑惑の念が生じたので、何処をどれだけ歩いたのかを問いただすと、彼は素直に「一度も歩いていません」。

体験博後、熊野古道を歩く人がめっきり多くなっているが、Kの(迷)解説は、春風に吹かれて運ばれてくるように、今も心地良く耳に残る。そんな彼も今は、政治の道に迷い込みながらも懸命に県民に春風を贈っている」。

これが、嶋田さんが書いてくれた「春風広報マン」の文章です。

読んでみて微笑が出てくる文章になっていることや、上手く表現してくれているので、とても気に入っています。春風のように感じてもらえることはとても名誉なことであり、嬉しいことです。春風はとても心地良く、時には眠気を誘います。安心感や安らぎを与えてくれるのが春風です。今も変わらずに多くの方に春風のような心地良さを与えられているとすれば、当時と変わらない気持ちで行動をしているのだと思います。県民の皆さんに春風を贈れているとすれば、そのことに幸せに感じています。