コラム
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2014/6/9
1474    ご恩返し

作家の神渡良平さんの話を伺いました。教訓となるべき言葉を以下に伝えます。

「これまで不幸だ、災難だと恐れ嫌っていた人生の苦難は、実は自然なルールから外れたぞ、それでは不幸になるぞと注意してくれる赤信号であり、一歩進んで、その苦しみを恐れず、逃げず、まともに受け、一押しすると、そのすぐ向こうに、広々とした幸福の世界があるということを教えてくれる門灯なのです」。これは丸山敏雄氏の言葉だそうです。

神渡良平さんは、「一粒の麦」というタイトルの冊子を発刊していますが、これは丸山敏雄氏のことを書いた作品です。一粒の麦とは、「一粒の麦が地に落ちて死ななければ、それはただ一粒のままである。しかしもし死んだら、豊かに実を結ぶようになる(ヨハネによる福音書第12章24〜25節)」というのが解明だそうです。

命は与えられたものですが、やがて大地に戻る運命にあります。人は一粒の麦のような存在ですが、その一粒が大地に落ちることで、次の生命が大地に宿るのです。永遠の命というものはありませんが、言葉や教えは次の世代やその次の世代にも伝えることができます。そんな生き方をすれば永遠の命に至ることができるというものです。自らは一粒の麦であっても、一粒の中には思いも知識も経験も詰め込まれているのです。それらの形になっていない成分は言葉という姿で次の時代に伝えられるのです。生き方や伝えるべき言葉を残すことが命を与えられた者の使命なのです。

でも次の世代に生き方や言葉を伝えることを難しく考えてはいけません。仕事を通じて社会を良くしていくことや自己実現を達成することは仕事を通じてのご恩返しなのです。そんな社会に役立つ仕事をしていると、周囲の人から言葉を受け取ることができます。その言葉は「ありがとうございます」、「助かりました」、「おかげさまで」という言葉ですが、仕事をした結果としてこんな言葉を言ってくれたら最高の幸せなのです。

社会に役立つ仕事をすれば、毎日のように幸せが訪れることになります。幸せな毎日が実現できているとすれば、その生き方は次の世代に伝わります。その理由は、人は幸せを求め実現させようとする存在なので、幸せな毎日を過ごしていれば、そんな毎日は後に続く人たちの道標となります。

人生はご恩返しだといいます。ご恩を受けた人に直接ご恩を返すことも大事なことですが、自分が受けたご恩を後輩や次に続く人たちのためにお返しすることは、もっと大事なことなのです。自分が受けたご恩を返していくことが人生なのは、そのご恩を受け取った人がまた次の人に受けたご恩を返していくからです。そんな連鎖が続いていくと、必然的に幸せな毎日が私達のところに訪れます。

私達の毎日の生活において、「ありがとうございます」、「助かりました」、「おかげさまで」という言葉を常に発していたいものですし、周囲の皆さんからこれらの言葉をいただきたいものです。

最後に作家の芹沢光治良先生の言葉で締めてくれました。「文学は物言わぬ神の意思に文字を与えることである」という言葉です。これを私達の日常に当てはめると、「その時々の言動は、物言わぬ神の意思に文字を与えることである」となります。人間は神の子どもだとすれば、親の意思を言葉と行動によって表現しているのです。