コラム
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2014/6/5
1472    生きる

6時間にも及ぶ手術を受け、現在入院中のOさん。様態が優れないことから治療を継続しています。食道の手術をしていることから呼吸が苦しく呼吸器を取り付けて回復を待っている状態です。お見舞いに行って励まそうと思いますが、気持ちで負けないように必死で戦っているので励ます言葉を伝えることはできません。それよりも「普段から全力で走っているので、今はゆったりとした気持ちで回復を待ちましょう。慌てないで良いからゆっくり治して下さい」と言葉を伝えるのが精一杯です。

また言葉を発することがでないので筆談で会話をします。心配事は自分の身体のことではなくて自治会のことばかりです。

「秋の研修会は何月頃に計画しているのですか」。「10月頃でどうでしょうか。Oさんが回復して元気になってから行きましょう」。

「今年の連合自治会の研修会はどうだった」。

「サントリーの天然水の工場と諏訪湖に行きました。Oさんが行けなくて残念でしたが、自治会の皆さん達が代わりに頑張ってくれていましたよ」。

「大人の学校はどうでしたか」。

「廃校を活用した学校で授業を受けてきました。昔の机や椅子があり、とても楽しい学校でした。みんなで『ふるさと』や『ふじの山』を歌って楽しかったですよ」。

このような会話をすると安心した表情になりました。自分のことよりもみんなことを気にしている、本当に責任感が強く立派な方だと改めて思っています。

ただ筆談なので、もどかしさがあるように感じます。言葉を発することができない、呼吸器と点滴を受けていることから自由に歩くことができないことが、とても辛いようです。

病院に入院していると一気に活動範囲が狭くなるので、普段は走り回っているOさんは歯痒い思いをしていることが分かります。

こんな話をしているとOさんがノートを渡してくれました。表情が「読んでくれ」と伝えてくれています。開けてくれたページを読みました。

「皆様各位。今まで長い間、いろんな人々に大変お世話になり、ありがとうございました。感謝とお礼を申し上げます。現在ここにいられるのは皆様のお陰だと十二分に自覚しております。いろいろありましたが、この70年、先だっての手術で死という苦しみを見てきました。今ここに存在すること自体が不思議、又、皆様のお祈りの賜物であります」。

自筆でこのように書かれていました。文字が乱れているのは、苦しさの中で必死に書いたからだと思います。この他にも呼吸ができないことが苦しい、身体が動かないことが辛い、ベッドの上でトイレをすることが辛いと書かれています。辛くてもうダメだという言葉も書かれていましたが、これを読むと苦しい時期を何度も乗り越えていることが分かります。

身体が弱ると気持ちも弱ってくるようですが、弱気に負けないように自分の心とも戦っています。食道、肺、腸の手術を行い、苦しい気持ちと辛い気持ちに負けないで、生きるために全力で戦っている姿に感動しています。

死を意識した時から生きることを意識すると聞いたことがあります。生きていることが今日を素晴らしい日にしていることを感じます。