コラム
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2014/6/2
1469    幸せな結末

大瀧詠一さんの曲「幸せな結末」はドラマ「Love Generation」の主題歌です。懐かしい大瀧サウンドが主題歌になったこのドラマは当時高い視聴率を弾き出していたと思います。「幸せな結末」ってとても素敵な響きです。大瀧詠一さんのことはアルバム「A LONG VACATION」で知り、最初は取っ付き難いと感じましたが、当時流行していたことからファッション的に聴き始めました。今も残る名曲がたくさん収録されていて、ファンになったことを覚えています。その後、楽曲提供以外で名前を聞かなくなったのですが、「Love Generation」で大瀧サウンドが復活したことが嬉しかったように思ったものです。

何かに戸惑っているようなサウンドは大瀧さんらしくて、その時も今も一番大好きな曲となり、歌う機会があれば今も歌っています。

ところでこのドラマは、衝突しながら、戸惑いながら成長していく二人が主人公です。ガラスのリンゴが度々登場するのは、綺麗だけど壊れ易い人の心を表しているようです。人はガラスのリンゴのような存在で、順調に物事が進んでいるようでも傷つきやすいものです。他人からの一言に傷つき、仕事で失敗しては悩み、日々何かの壁に突き当たり乗り越えようとします。ガラスのリンゴを通して世界を見ると、未来の自分が見えるようです。

ドラマ最終回では、本物の赤いリンゴが出てきます。ガラスのリンゴが本物のリンゴに変わったのは、自分達が目指している本物を見つけたからです。リンゴも心も本物を手に入れた瞬間、幸せな結末が訪れます。

幸せな結末は簡単に訪れてくれません。最初から幸せな結末があると、何が幸せなのか分からないのです。与えられたものに幸せを感じるのは子どもの時だけです。大人は自分の意志で行動し、欲しいものは自分で掴み、成長していくことで幸せを感じることができるのです。与えられたことやモノを得ることで本物の幸せを掴むことはできません。人生には日々ドラマがあり、ドラマの中で遭遇する出来事を乗り越えて、成長していく過程を経て、やっと訪れてくれるのです。

手に掴んだ幸せな結末の場面でドラマは終わりますが、ハッピーエンドを迎えた二人は本物のリンゴのような人生を歩んでいったと思います。いつまでも輝いていないけれど本物だけが持つ味がある。来年になるとまたリンゴを入手することができる永遠を掴んだこと。ドラマから今を生きることを学ぶことができたように思います。

大瀧詠一さんがお亡くなりになり、時を経てドラマを見る機会がありました。主人公達は幸せな結末を求めて、この時を生きていました。眩しい時代がそこにはあり、そんな季節は永遠のように思いますが、永遠の今はないことに気付きます。そして季節は過ぎると、もう同じ時に戻れないことも感じました。

でも同じ時に住んでいられなくても、同じ時に戻れなくても、未来を信じるためのガラスのリンゴと、現在を生きるために必要な本物のリンゴがあれば、この先も幸せな結末は自分で手に入れることができます。ガラスのリンゴは目指すべきものであり、本物のリンゴは現在ここにいることです。

大瀧詠一さんはこの歌詞とドラマを通じて、真剣に悩み生きていれば、誰にでも幸せな結末が訪れることを伝えてくれています。私達にもドラマのような幸せな結末が待っています。