コラム
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2014/5/29
1467    北京で学ぶ4

北京首都国際空港での出来事です。機内に預けられる荷物には重量制限があります。中国国際航空の場合23kgまでですが、北京首都国際空港でその重量を超えてしまいました。関西空港から北京に出発する時は預けられたのですが、同じ重さのものが北京から関西空港行きの便では預けられなくなったのです。そのためバゲージから荷物を取り出して23kg以内に抑える必要が生じました。並んでいる列から退いて後方に行って荷物を取り出してバゲージを軽くしました。荷物を預けるために戻ったところ、係員から「列の後ろに並んで」という発言がありました。チケットを発行してもらって荷物を預けるだけなので、手続き中という認識でいたのですが航空会社の係員は最初から手続きを行うべきだという認識だったのです。

係員は更に「手続き中であるから列を離れてはいけない。一度列を離れたからもう一度並ぶべきだ」という主張でした。日本人は謙虚ですから、後ろに並んでいる人に迷惑を掛けないように列を離れて荷物を取り出そうとします。中国ではこの係員の発言のように、列を離れてはいけないと考えるので、預かり窓口の最前列でバゲージを開けて、そこから中のものを取り出そうとします。列から離れると自分の荷物を預けることが後になってしまうので、自分を優先させるのです。

しかしこの行為だと、自分の行為のために列に並んでいる全ての人に迷惑を掛けてしまうと思います。それが日本人的発想で、中国ではそうは考えないのです。自分の行為を終わらせてしまってから、次の人が手続きに入るべきだと考えます。ここに大きな認識の差があります。

お客さんである私達は、航空会社と乗船契約をしているのであって係員としている訳ではありません。中国の航空会社の経営陣は、お客さんへのサービス向上を経営方針として掲げています。預け入れ荷物が重量オーバーした場合、他のお客さんのことを思って後ろの場所で荷物を整理したお客さんが、作業を終えて手続きに戻った場合、優先して預かる行為をすべきだとしています。何故なら、他のお客さんに迷惑にならないように行動をしているお客さんに感謝すべきだからです。もし前列に陣取って自分の荷物整理を始められると、並んでいる他のお客さんの搭乗手続きも荷物の預け入れも停滞してしまうからです。

経営陣はそのことを分かって現場指導しているのですが、中国人の感覚がお客さまサービスの考えに立っていないので係員個人の考えで対応しているのです。

私達は航空会社と契約しているのであって、偶々対応しているだけの係員と契約しているものではないのです。個人の主観と考え方でサービスレベルの低い手続きをされてしまうことは残念なことです。

現在の経済力、これからを支える人材力など可能性に満ちた国ですが、現場力は弱いと感じます。経営陣が国際的に通用するようなサービスを提供しようとする意識と、お客さんのことを思うよりも自分の仕事のやり方を押し通す現場の意識の差は、中国のサービス力は低いという意識付けをしてしまいます。トップと現場の意識や実力に差がありすぎるのが中国の弱さだと思います。ですから、中国が日本に倣おうとしているのが現場のサービス力です。

おもてなしや配慮する気持ち、お客さん満足度を向上させることなどが、日本のサービス力だと思います。サービス力では日本が数段も勝っていて、世界で勝負できる分野です。