コラム
コラム
2014/5/14
1460    リリーフ

池井戸潤氏の「下町ロケット」を読み終えました。途中で止まらなくなる面白さで一気に読んでしまいました。自分が正しいと思うことはやりとげる覚悟を持って具体的に行動することで、夢を実現させることにつながります。全ての夢が叶う訳ではありませんが、覚悟を持って具体的行動を起こさない限り、夢に届くことはありません。

主人公の佃社長が大企業を相手に勝負している時に「なにが正しいかは、後になってみないとわからないさ」という台詞があります。その時は正しいかどうか分かりませんが、それでもやらなければ正しいことかどうかも分からないのです。やらなければ正しいことであっても正しいと認められないからです。社会の出来事は、やりとげて結果を出してから評価を受けることになります。後になって分かることを今考えても仕方ありません。正しいかどうか迷うことは、むしろ歩くことを止めさせる効果がありますから、考えすぎるのは良くありません。

佃社長は続けます。「肝心なことは、後悔しないことだな。そのためには、全力を尽くすしかない」と。人生で訪れる場面において、今やれるのにやらなければ後悔することになります。例え逃げたい場面でも、逃げないで立ち向かう勇気が必要です。一事が万事と言うように、逃げの姿勢を見せる人に次の機会は訪れることはありません。どんな場面でも一端は受け止めること。結果を出せる、出せないは受け止めてからの行動によるものです。

困難な局面では結果を出せないことの方が、むしろ多いのです。10回の場面を10回とも上手く行かせたいと思うものですが、それはとても困難なことです。特に議員の活動をさせてもらっていると簡単な場面での依頼というものは少ないのです。野球で言うと終盤戦でピンチの場面にリリーフを任されるようなものです。しかもリードしている場面ではなく1点差か2点差で更にピンチという場面なのです。もし塁上に溜まっているランナーを帰したら得点差が広がり戦う意欲を消失させます。もし後続を抑えてゼロ点に抑えたとしても、まだリードを許していて、しかも攻撃する機会は少ないという状況なのです。ピンチを凌いで残り少ない機会に逆転を狙うような場面が多いので、逆転勝ちをすることは難しい仕事です。それでも後悔しないようにやれるだけのことはやります。結果が出せない場合もありますが、リードしている場面で引き継ぐ仕事ではなくてリードされている場面での仕事だということも分かって欲しいと思います。

「下町ロケット」は大企業を相手に真っ向から逃げないで勝負する中小企業を描いています。強いものに対しても佃社長は正しい主張をしています。正しい行いをしていれば勝負している相手も認めてくれる時が訪れるのです。大企業や大きな組織には人材がいますから、正しいものを正しくないと否定する人ばかりではありません。勝負の相手を認め良きライバルとして共に成長をしようとする人もいるのです。

このように望まれている時は望まれるように対応すべきです。奇しくも「アメイジング・スパイダーマン2」でも、「残念ね、望まれているのに現れないなんて」という台詞があります。これは恋人を失い希望を亡くした主人公ピーターがスパイダーマンになることを止めて半年が経過した時に言った主人公の叔母の台詞です。望まれている時に、望まれているような戦いをするのが主役です。人は誰でも人生の主役を生きています。きっと誰かに何かを望まれているのです。望まれていることを避けている姿勢でいると、望まれなくなります。人から望まれているということは、とても幸せなことなのです。