コラム
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2014/5/12
1458    観察の言葉

会合で元小学校の校長先生の話がありました。この先生の話からいつも学ぶことがあり、今回聞かせてもらった話も勉強になるものです。

今年の抱負は心を柔らげることだと話してくれました。人は感情の生き物ですから、時として感情に支配されることがあります。そんな状況になったとしても、怒りの言葉を捨てて観察の言葉で相手に伝えたいと話してくれました。観察の言葉とは、上手く行かなかった事例があってもそのことを責めるのではなくて、そんな事態に陥った原因を本人に悟らせることを目指した言葉を伝えよう心掛けているということです。人を批判することなく、行動を観察することで失敗を繰り返さないようにアドバイスを行うことを言動の基本としているのです。観察の言葉は相手に対して、「どうしてこんな事態になったのか、その前後を思い出して考えてみましょう」という会話から入ることになります。例えば不注意から怪我をしたとします。直接の原因は転倒して足に怪我をしたということであっても、真の原因は違うところにあるかも知れません。

怪我をする直前に嫌なことがあって、そのことを気にしていたため転倒したとすれば、真の原因は転倒する直前の嫌な出来事だといえます。同じことを繰り返さないためには、嫌だと感じる人との会話の方法を学ぶことや、可能であればその人と接触を避けるなどの対策を講じることで、怪我をした原因から離れることができます。

人の行動は心から大きな影響を受けています。朝、自宅を出発する時に、家庭内で嫌なことがあれば仕事をしていても気持ちが入りません。仕事に打ち込むためには家庭内で起きた問題を解決しなければならないのです。直接の原因を解決するためにはその原因が発生した場所で解決を図る以外にありません。家庭の問題を職場で解決することはできないのです。

仕事が捗らない原因が家庭にあるとすれば、その問題の所在のところに戻って解決する以外にないのです。逆に職場の出来事が原因で帰ってからも元気がないとすれば、翌日に職場に行って、その問題の発生した原因となった場で解決しなければならないのです。上司に叱られたのであれば上司と話し合うこと。営業と技術との間で意思疎通が図れなかったとした場合、営業と技術部門で集まって再度解決に向けた話し合いをすべきです。

このような場合、本人達は状況から抜け出す方法を見つけ難いので、観察の言葉で気付かせることも大切なことです。怒りの感情からは冷静な原因分析と対応策を見つけることはできません。観察する視点を持つことで失敗を繰り返さない方法を見つけることができるのです。失敗を繰り返さないためには自分の内心を自分で見直すことが必要なので、観察の視点を持つことができれば自分の行動においても役に立ちます。

怒りからは何も生まれませんし、仮に生まれるとしてもマイナスの事態を招くだけです。安い不動産を購入するとします。この価格なら損はしないと思っていても、固定資産税や維持費などのマイナスの要素がありますから、利益を生み出さない不動産は現状維持ではなくてマイナスの資産となります。これと同じように怒りは人にとってマイナスの資産となっています。怒りの言葉を発する人はマイナスの資産を所有しているので、マイナスの人間関係から入ることになります。それでは仕事は進展することはありません。ですから怒りの言葉ではなくて観察の言葉を使いたいものです。