コラム
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2014/4/25
1451    限りある命

がん治療のため入院しているAさんを訪ねました。気楽に健康診断を受けたところ、がんが発見されたのです。Aさんは現役社長で自治会長の役割も担っていることから健康には自信があったのですが予想外の診断結果に自身が驚いて不安になったと言います。しかし気を取り直して「絶対に大丈夫」と信じて手術をすることになりました。そんなAさんのお見舞い行ったところ、「自治会長の職に命を助けられた」と話してくれました。自治会長をしているAさんは自治会活動に協力してくれたX病院の先生にお礼を伝えるために訪問したのです。同じ自治会にある病院だったことから、協力してくれたこともありご縁を大切にしたいと思い、ここで健康診断を受けたのです。

二日後、Aさんに電話が入りました。「直ぐに来てください」。何のことか分からないけれどX病院に行ったところ、がんであることを告げられたのです。予想もしていなかった結果に驚きましたが、元気で前向きに治療をする決意を固めました。

お見舞いの席で話をしたのですが、先に書いたように「自治会長の職に命を助けられました。もし自治会長をしていなかったら、自治会内の病院にお礼に行くこともなかったと思いますし、それ以前に仕事を最優先の生活をしていたので健康診断を受けることもなかったと思います。今年になるまで健康診断を受けたことはなかったのですから」と続けて話してくれました。

「自治会の皆さんのお役に立つ活動をしていたから、命を助けてもらったと思います。まだまだみんなのために尽くせという神様の命令だと思います」ということです。

私たちは見えない神様という存在によって生かされていると考えると、自分一人では有り得ないような奇跡に出会います。Aさんのがんの早期発見もそのひとつです。

そして「手術をした後は生き方や考え方が変わるでしょうね」と微笑んでくれました。それまでも仕事一筋だったAさんですが、自治会長を引き受けてから地域のために尽くすという使命感から人生が変わったと言います。そしてがんを克服した後の人生観も、また良い方向に変わると思います。

そう言えば、Aさんをお見舞いする前日、六か月の白血病との闘いに打ち勝ったIさんとお祝いの会を行ったのですが、その席でIさんは「生きていることが素晴らしいことだと気付きました。そして欲しいものは何もなくなり、生きていることに感謝しています」と話してくれました。

命が限られたものであることを意識した時、人は人生観を変えることになります。生きていることが感謝すべきことであり、人々への感謝、何気ないことへの感謝の気持ちを持つことになるようです。何よりも生きていること、それに価値があり、それ以外のことは些細なことだと分かるようになるようです。

人は何かを成し遂げることに価値があるのではなくて、生きていることに価値があるのです。生きている中で社会に貢献すること、人に優しくすること、自分にできることをやろうとすること、そんな思いが湧き出てくることに生きている価値があるのです。

命が限られたものだと意識した時、人は感謝の気持ちで生きることになります。感謝の気持ちを持った人は、蘇えってそこから真に価値のある人生を生きることになります。