コラム
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2014/4/17
1446    夢の過程

ブロードウェイで舞台の夢を追いかけている20歳代の女性がいます。ボストンの大学で演劇を学び、卒業後は舞台を夢見てニューヨークに向かいました。世界中の才能が集まるブロードウェイで日本人が輝く舞台を目指しているのです。

演劇を学んだからと言って簡単に舞台に上がれる訳ではありません。下積み生活が続いていますが、それが辛いのではなくて将来が見通せないことが辛いことだと聞きました。現時点で確定していることは何一つありません。オーディションを受け続けているのですが、何時合格するのかも分かりませんし、もしかしたらずっと不合格が続くことも考えられます。何の保証もないのです。オーディションに合格しなければ舞台には上がれませんし、給料ももらえません。夢が叶わないことと給与が得られないという不安が続く世界の真ん中にいます。ゴールが見えない世界の不安感は知る由もありませんが、何回受験したら合格だとか、どのレベルに到達したら合格という基準もありません。オーディションでは経験者との戦いに加えて、次々に現れる若い才能との戦いも始まっています。

才能の塊の中で戦い続け先が見えないことの不安感は、日本でいると味わうことのできない世界です。

それでも挑戦し続けているのは理由があります。先が見えないけれど挑戦できる環境にいられるということは幸せなことだからです。挑戦できる場所に立っているという充実感は、不安感よりも大きな幸せを感じられるのです。ブロードウェイは誰でも挑戦できる舞台ではなくて、限られた人だけが挑戦し続けられる舞台なのです。

夢は達成するためにありますが、夢に挑戦し続けられる過程も夢を達成するのと同じような幸せを感じられるものだと聞きました。本人は思ってもいませんが、仮に夢が実現しなかったとしても挑戦し続けている経験は、幸せという財産を得られているようなものです。幸せを感じながら生きている今日は、何物にも代えがたいものです。きっと、挑戦できる日々や挑戦できる環境にある今日という日を、それができなくなった時、幸せだったと感じると思います。

夢の舞台に立てたとしても、立てなかったとしても、いつか挑戦できなくなる日が訪れます。いつか訪れる日に「もっとやっておけば良かった」と後悔しないために、不安があっても今日も挑戦しているのです。

「夢の世界でいられることは幸せなことです」という言葉のように、いまが幸せだと感じながら生きていることが最良の幸せなのです。きっと挑戦している今が、夢の世界にいるという幸せを感じているのです。ですから夢を目指している時は、夢を達成した時と同じような幸せを感じているのです。ただ不安も大きいので、幸せマイナス不安という式から得られる答えが、夢を実現した時の幸せと比較して達成感が少ないと感じているのです。

夢に挑戦している過程は、100の幸せマイナス80の不安、イコール20の幸せだとします。

夢を達成した時は100の幸せからマイナスする不安はゼロですから、100の幸せが届けられます。違いがあるように思いますが、幸せの最大量は100で同じです。このように、挑戦している過程においても100という最大の幸せを感じているのです。夢に挑戦するということは、その段階で既に幸せを感じているので良い人生を生きていると思います。