コラム
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2014/2/5
1402    決意と実行、そして継続

平成26年1月の第92回全国高校サッカー選手権大会で優勝した富山第一高校の大塚一朗監督のエピソードです。

元日本代表監督のイビチャ・オシム氏から教えてもらった言葉によって、同校を高校サッカー決勝戦へと導いたというものです。大塚監督がオシム監督に「育成で一番大事なことは何ですか」という質問をしました。それに対する答えは「対人的なゲームをたくさんやらせろ。コーンだけ立ててドリブルをやらせても意味がない。なぜならコーンはボールを取りにこないから」というものでした。

練習のための練習を続けるよりも、実戦形式の練習を行うこと。そして試合経験を重ねることが実力をつけるために必要なことなのです。一人でいる時は人前で話をすることはできる自信があるのに実際に人前に出ると話せないのは、自分から実践を避けていることも原因です。「上手く話せるようになってからやろう」と思っているだけでは、いつまで経っても人前で上手く話すことはできません。

営業の仕事も同じです。以前、ある会社で営業部門に配属されて数ヶ月も経つのに、お客さんを訪問しない人がいました。上司が「いつになったらお客さんのところに行くのですか」と尋ねました。「営業の知識が不足しているので、お客さんに商品説明ができるだけの知識を身に付けてから行きます」という答えでした。

実践を避けていれば、どれだけ机上で商品知識を身に付けても、お客さんを納得させることや買ってもらうことはできません。お客さんは説明を受けた後、マニュアルにないような疑問や質問をしてきます。それに個人の責任と人格をもって対応することで納得してもらえるのです。試合をしないで練習ばかりしていても上手くならないように、営業の仕事はお客さんのところで鍛えられるのです。

富山第一高校の練習を見たことはありませんが、きっと基礎力のある選手は実戦形式の練習をしている筈です。監督も選手も、そんな練習方法を続けると結果が出せると信じて継続してきたと思います。

元阪神タイガースの金本知憲選手は、電気新聞(平成6年1月7日号)の中で、次のような話をしています。「何か成し遂げようとして、これからが頑張ろうとか、心を入れ替えるとか、そういう決意をするのはみんなできる。それを実行する人は半分ぐらいで、継続できるのがそのまた半分ぐらい。そして結果に結びつけられる人はもっと少なくなりますね」。 

富山第一高校の優勝は、優勝を目指すという決意と実行、そして継続してきた結果です。分かっていてもできないことをやって退けた結果の優勝だと思います。誰かの成功体験を聞いて自分もできると思いますが、できないのは決意と実行、継続をしていないからです。

100人いれば決意することは100人ができます。実行するのは50人、継続する人は20人ぐらいの比率でしょうか。残った20人の中から1人か2人が結果を出すことになります。

成功した人だけが成功体験を話すことができます。それを聞いてもその通りにならないのは、100人の中の1人の体験を聞いているのに、100人いれば100人が成功できるようと感じ、自分も簡単にできると思っているからです。簡単なことを続けることは簡単ではないことなのです。