コラム
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2014/1/17
1392    人は変わらない

「人はなかなか変われない生き物である」。このことをビジネスで取り入れているのが世界です。マクドナルドがハッピーセットでおもちゃを景品につけているのは、子ども時代に食べたマクドナルドの味は一生忘れないからです。大人になった時にでもマクドナルドを食べてもらえるように、目先の損や得ではなくて将来の顧客になるように景品をつけて食べてもらっているのです。

P&Gが開発途上国に固形石鹸を無償で配布しているのも同じ戦略です。子どもの時に使った石鹸は愛着があり記憶の中に存在しているので、大人になってからでも使う石鹸はP&Gを選択することになります。現在は損をしてでも将来の得を得ようとしているのです。

子どもの時の味覚や記憶は生涯消えることはありませんから、世界企業は人間の特性を活かして戦略を立てているのです。

電気製品も同様です。開発途上国ではサムスン電子のデジタル製品が日本製品を圧倒しています。日本製のデジタル製品の性能が劣っている訳ではありません。しかし世界で売れているのはサムスン電子製なのです。

日本製品は性能を追求しすぎるため、技術者があればお客さんにとって便利だとか思う機能を付加して行きます。技術を付加していくと価格が上昇しますし、開発までに時間が掛かりすぎます。それよりも何よりも、多くの人から必要とされない機能が付加されていて、その製品を買おうと思わないのです。それよりも扱い易くて安価な製品を選択することになります。経済が発展途上の国の所得は低いことから、安価なデジタル製品で良いのです。日本は開発途上国の高所得者をターゲットとしていますが、現在のところその市場は小さいものです。

将来経済成長した時に、機能が高い日本製品を選択してくれたら良いという考えは通用しません。何故なら、人は保守的で変わろうとしない存在だからです。小さい時に家で見たテレビが記憶の中にあります。子どもが大人になって十分な所得を得るようになっても、家庭を持って買うデジタル製品はサムスン電子の製品になります。所得が増えたから日本製品を買おうとは思わないのです。

恐らくサムスン電子は、開発途上国の経済成長に合わせて、それに見合った製品を市場に投入する戦略を立てていると思います。将来とも、日本はこれらの国で優位に立つことはできないと見るべきです。

日本は優れた製品、技術力のある製品を投入すれば売れると思っていますが、そうではありません。ナンバーワンの製品でなくても、最低限必要な機能があり、より安価な製品を消費者は選択するのです。

子どもの時に使ったものを選択しているのは日本人も同じです。松下電器、ブランド名が消えた、当時のナショナルの製品を今でも購入しているのは60歳代の大人達です。ナショナルのテレビが売れていた時代の記憶が60歳代の大人にはあるのです。少し下の世代になるとソニーを選択するといったところでしょうか。

人間は変わらない存在なので、使い慣れたもの、聞いたことのある名前を覚えていて、それを選択します。変わらない意識の中にどう入っていくのか、浸透させるための課題です。