コラム
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2014/1/14
1390    善性と品性

数年前に会社を退職されたIさんと話をした時の良い話です。Iさんは現役時代から自分を厳しく律している方で、人に迷惑を掛けることはしない姿勢を貫いています。そんなIさんの息子さんが数年前に就職をしました。

社会人になった訳ですから、社内外の付合いが始まりました。慣れてくると懇親会に行く機会もあり、何軒かのお店にも立ち寄るようになりました。息子さんは知らなかったのですが、そのお店の中にIさんが現役時代に利用していたお店がありました。

そこで息子さんは「Iさんの息子さんですか。とても立派な父親を持っていますね。Iさんは品格があり、決して崩れない品性を持っている方でした。お父さんのような生き方をして下さい」と言われたそうです。それも決して一軒だけではなくて、その他にもIさんが利用していたお店の経営者から同様の話を聞かされたのです。

息子さんはそれを聞いて自宅に帰った時、母親に「僕はこの父親の子どもで生まれて良かったと思っています。皆さんから慕われている素晴らしい人であり誇りに思います」と伝えたのです。この話を聞いたIさんは嬉しくて仕方がなかったと言います。

人との付き合いで人は評価されます。無名なうちは社会の評価は気にする必要はありませんが、接する個人の評価はとても大事です。人は品格、品性、人格が大事で、それを評価するのは付き合いをしている人です。そんな皆さんからの評価が得られていることは嬉しいことであり、現役時代の生き方が正しかったことを示しています。

私から見たIさんは正義感に溢れ、不条理に屈しないで正義を貫き通す人です。例え上司の指示でも取引先からの要求でも、不条理なことにはNOを突きつけました。小さな器の上司とは衝突したこともありましたが、経営者からの評価は「信頼できる」と高いのは当然の事でした。

Iさんからは「人は品性が大事で、飲食店に行くとその人の品性が分かるものだからね」と聞いています。この時、2年前にIさんから教えられた言葉が即座に出てきました。今もとても大切にしている教えです。

「日本に数ヶ月も滞在していると、どんな外国人でも自分の国では道徳的教訓として重荷になっている善徳や品性を日本人が生まれながらにして持っていることに気づく。最も貧しい人々でさえ持っている」。これはモース(米国物理学者。大森貝塚を発見した人物)の当時の日本人に対する評価です。

欧米人が身に付けたいと思っている善徳や品性を日本人は生まれながらにして有しているのですから、私達が先祖から受け継いでいるこの遺伝子は素晴らしいものです。

モースの話を出したところ、Iさんは「モースの言葉は私の大好きな教えです。日本人は先祖に感謝しなければならないよね」と、モースの言葉を覚えていたことに感謝するような表情で話してくれました。

日本人はその素質の中に、どんな人でも善性と品性を持っているのですから、このことは民族として誇りにしたいことです。そして社会が乱れている時において、この備えている力を発揮すべきです。「私が片桐さんを好きなのは、品性があり清潔だからですと」Iさんが話してくれました。人格者であるIさんからの言葉を誇りに思います。