コラム
コラム
2014/1/7
1387    ゼロからの脱却

「計画書を作るよりもひとつでも実行することを求められています」という話を聞きました。

その組織のトップの方針だそうです。これまでのトップは長期計画や中期計画を策定することに熱心で、部下は外に行くこと時間がなくなり計画書ばかり作っていました。その結果、お客さんとの接点が減少し、市場からの要求が分からなくなってしまったのです。データの収集や仮説を立てることは上手くなりましたが、現場を知らなくなってしまったのです。

お客さんの声、法人からの直接の要望を聞かなければ、どけだけ素晴らしい計画書を作ったとしても業績は上がりませんから全く意味はありません。

そんな組織の状態に気付いた新しいトップは、「計画書を策定することは不要。そんな時間があるのなら一軒でもお客さんのところを訪問すること」と伝えたのです。

仮説や出回っている一般的なデータ分析をするよりも、現場に行くこと、お客さんの話を聞くことの方が組織の仕事に役立ちます。ひとつでもお客さんの要望に応えていくことが業績を上げることにつながります。

接点がゼロであればどこまで行ってもゼロのままです。ところが0.01でも行動を起こすと可能性が発生します。ゼロには可能性は宿りませんが、ゼロでなければ小さな数字であっても可能性は宿ります。

議会で一般質問をする意味も同じです。一般質問をすることで、取り上げたことが公の議論になります。その時はできないことだと思っても、議会で取り上げることでゼロではなくなります。一般質問に対しての答弁で、「検討します」や「働き掛けます」という役所言葉が返されたとしてもゼロではないのです。

県が課題に対して働き掛けることによって、止まっている課題が動き出す可能性が生じます。検討した結果、課題を克服できる可能性が発見出来るかも知れません。議会で発言をすることはゼロの状態から、例え0.01でも動かす力として作用するのです。その証拠に和歌山県では一般質問で取り上げた質問に対しての現状を、一年間どう対処してきたのか、どんな結果になっているのかを報告書として発行して知らせてくれます。その時はできなかったことでも、継続して働き掛けた結果、動き出している課題もありますし、止まっていても継続して取り組みを続けている課題もあります。

一般質問をしなければ可能性はゼロのままだったものが、ゼロではなくなっているのです。

一般質問は課題に対して、可能性というエネルギーを与えているようなものです。机の上に止まっている物体を後ろから指先で弾き、前に動かせるようなものです。机との接点に摩擦が働きますから予想通りのスピードは出ないかも知れませんが、少しでも動かすエネルギーを与えることになりますし、今の位置とは違う位置で止まることになります。元の位置と違うということは、視点も見え方も違うということです。

見え方が違うと、それまで当然と思っていたことでも、「これはおかしい」と気付くことがあります。ビルの5階で見る外の光景と6階から見る外の光景は明らかに違うように、位置を変えると同じものでも違って見えます。一般質問は課題を取り上げえ、そこにエネルギーを与えることでそこから位置を変える力を持っています。位置を変えることは視点を変えること。見方が違うとおかしいと思うことに気付きます。