コラム
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2013/11/22
1365    思いを込める

自分の言っていることを相手に言ってもらうゲームをすると、自分の言っている言葉が自分の思いと違って聞こえていることに気付きます。これは面白いのか恐ろしいのか分かりません。

例を挙げます。話している相手が、「大阪に行きたいので車で送ってくれますか」と聞いてきました。それに対して「では和歌山駅まで送ります」と答えました。何気ない会話ですが、相手は不満そうな表情になりました。

その理由は、相手の意思を確認すると意味が取り違えていることに気付きます。

その人は私に対して、「できれば車で大阪まで送って欲しい。そしてショッピングに付き合って欲しい」という気持ちを持って「大阪に行く目的は一緒にショッピングをしたいので一緒に行きましょう。だから車を出して下さい」という意味だったのです。

なるほど、言葉に隠された意思を確認して答えなければ、好意が好意ではなくなり、不親切または勘が鈍いという結果になります。

どちらも言葉足らずのところがありますが、問い掛けの言葉に込められた意思を確認して答えることがコミュニケーションで大事なことだと気付きます。そのことが分かって答える場合、「一緒に行きたいですね。大阪まで車で行きましょう」となります。そうすると相手は、自分の言ったことの意味が分かってくれていることに対してご機嫌になるのです。

分かっているように思っていても、人は人のことを理解していないのです。簡単な言葉で伝えられると思っているのですが、丁寧に言わなければ、そして答えなければ、「言っていることを理解してくれていない」となります。

ですから立場を入れ替えて言い合うと、相手のことを理解することができます。

この場合、車で送ってもらうことが目的ではなくて、一緒にショッピングに行くことか目的なので、問い掛ける言葉に気をつけて言おうと思います。

「大阪までショッピングに行きたいので一緒に行きましょう」という問い掛けになります。ここには車で送ってという言葉はでてきません。立場を変えた相手は趣旨を理解して「喜んで。では車で行きましょう」と答えてくれるかも知れません。また否定する場合でも、「残念ですが今日は時間がありません。来週なら行けますよ」という答えになります。問い掛けた相手は、自分が言ったことの趣旨を理解してくれていることから不満に思わないはずです。

伝わっていると思っていても、思いが伝わっていないのが言葉です。相手が望んでいる答えになっていると思っていても、そうなっていないのが言葉です。自分のことは自分が一番分かっているのです。親しい相手でも自分の思いと同じではないのです。

理解し合える共通の言葉であっても場合によって趣旨が違うのです。問い掛ける側は、自分の思いを言葉に込めて相手に思っていることを分かり易く伝えることが大切です。聞いた人は言ったことの趣旨を把握して、同じく相手の思いに答えていることが大切です。答えは肯定でも否定でも関係ありません。言ったことの趣旨を理解してくれていると思ってくれたら良いのです。質疑の立場を反対にしてみると、相手のことをより理解することができます。自分が思っているほど、自分が言っていることが相手に伝わっていないのです。

言いたいことは言葉を尽くして思いを込めたいものです。