コラム
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2013/10/28
1350    特別な一日

10月19日の一日だけ外出許可をとり、父親が自宅に戻りました。朝、迎えに行くと、とても嬉しそうな顔をしていました。常々、「早く家に帰りたい」と話しているのですが、身体の状態を見て帰らないでいます。ただ健康状態と本人の意思を尊重して、一日だけ外出許可をいただき、朝自宅に帰り、夕方にはまた戻るという一日を過ごすことになりました。

たった一日ですが、自宅に帰れる喜びを感じていることが分かります。当たり前のように訪れている今日という一日ですが、父親にとっては待望の一日であり、自宅に行きたいという願いがやっと実現した一日なのです。そんな大切な一日を過ごすことができました。

ですから午前中は一緒に自宅にいることにしました。父親は戻ると、それまでの定位置にゆったりと座っています。見ていて違和感はありませんでしたが、父親は「何だか久し振りで今までと変わったような気がする」と話していました。少し離れている期間が長かったので、そう感じたのかも知れません。ただ心から安心している表情があり、今日、帰れて良かったと思いました。

それは今朝朝食を食べている時に、父親がおかゆを喉に少し詰まらせたことから気分が優れない状態にあったからです。体調が優れないのであれば外出は今日でなくても来週でも良いかなと思いましたが、父親の悲しそうな表情を感じ、また付き添いの看護士さんが「今日をとても楽しみにしていたからね」という言葉で「父親が自宅に帰ることをとても楽しみにしていたこと」を知りました。少しくらい体調が優れなくても気をつけていたら大丈夫だと思い、予定通り一緒に帰ったのです。帰宅後の父親の表情を見ると、「帰って良かった」と思わずにはいられません。一緒に湯豆腐と白身の魚をいただいていると、父親には安心感があることを感じました。

突然、「何歳になったんや」と聞いてくるので、「今月の誕生日で52歳」と答えると、「早いもんやな。もう52歳か」と、何故か嬉しそうな表情で答えてくれました。次の言葉にその理由があると思います。「52歳は働き盛りやな」という言葉です。確か40歳代の時も働き盛りという言葉がありましたが、52歳になっても同じように働き盛りだと伝えてくれています。働ける時は社会に役立つように働くことを教えてくれているように思っています。

働きたくても働けない時が、誰のところにもいつか訪れます。今を大切にすることを伝えてくれているように思います。

そう話した後、コタツに座りながら安心したように目を閉じてしまいました。自宅に戻った安堵感から居眠りをし始めたようです。

私は午後から所用で出掛けましたが、とても大事な午前の時間を過ごすことができました。今日という一日は、今日だけに訪れることを改めて知りました。今日を生きることは実に素晴らしいことだと感じています。

ところであれ程待望していた帰宅だったのですが、午後6時位になった時、「少し疲れた」ということで、予定より早く入院先に戻ったようです。自宅は歩行器で歩くには狭く、座り続けていることで疲れたようです。滞在時間は6時間と少しだったのですが、帰宅できて良かったと思っています。今日だけという特別な一日をプレゼントされたように思うからです。

今日の日に起きることは、明日起きることはない特別なこと。そのことを知ったからです。