コラム
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2013/10/25
1349    10年前の信頼

本当に嬉しい話を聞かせてもらいました。Yさんの話です。Yさんとは約10年位前に会ったことがあります。当時、和歌山市立の二つの幼稚園の廃園が問題になっていました。理由は和歌山市の財政難でしたが、保護者に対して十分な説明がなく半ば強行に廃園を推し進めようとしていました。ふたつの幼稚園廃園の議案が提案され市議会は賛否で分かれました。

平成15年4月に当選させていただき、同年5月から市議会議員として活動を始めたばかりの私にとって、平成15年6月定例会でのいきなりの難問でした。保護者は市長や教育長からの説明を求めたのですが、当局に理解されなかったように記憶しています。

子どもの幼児教育の機会をこれまでと同じように求めている保護者の意見を、当時一年生議員が真剣に聞かせてもらいました。何としても廃園は避けて欲しいという要望があり、市役所の説明不足を感じ、また保護者の議会への要望活動や幼稚園での活動姿勢から、真に子どもを思う気持ちを理解したので廃園に反対する立場を取りました。途中の議論経過はこのコラムの本題ではないので記載しませんが、弱い立場にある人の意見を真摯に聞き、納得すればその立場を取ることが市民の代弁者として大切な姿勢だと痛感しました。

権力者側ではなくて普通に生活している立場からの視点を大切にするという、議員活動の姿勢を学び、以降、議員としての原点がここにあると意識しています。

結果として二つの幼稚園は廃園になったのですが、ひとつは幼保一貫教育の先駆けの新しい施設として存続することになり、現在もこの地元で園児たちの声が聞こえています。ただ当時、本当に残念な結果になったことは心の痛みとしてありましたし、保護者の心中を思うと市議会議員の責任と行動、そして議決の一票はとても重いものであることを痛感したことを覚えています。

そんな案件から10年が経過しました。当時の保護者や園児と会う機会は少なくなっていました。あれほど燃えた案件でしたが、過ぎてしまうと歴史は何事もなかったように傷口をふさいでしまいます。平穏に、そして穏やかに和歌山市の歴史は流れてしまっています。しかしYさんの言葉に初心が蘇りましたし、苦しい案件でしたが保護者の立場で関わって本当に良かったと思いました。

10年後の平成25年、Yさんが顔こりほぐしのサロンにやってきました。Yさんはオーナーに次のような話をしてくれました。「オーナーが女性だと分っていても、一人で知らないサロンに行くことは躊躇するものです。新聞記事を切り抜いて保存し、いつか行こうと思っていたのです。しかしフェイスブックでこのサロンに片桐さんが来ていることを知りました。あの片桐さんが来ているサロンであれば信頼できるので大丈夫、行って見ようと思ってきたのです」という主旨の話です。

10年前の出来事がYさんの中で信頼として残り、10年間そう感じてくれていたことを知り心温まりました。そして10年前の出来事がYさんの今回の行動につながったとことは、とても嬉しい出来事となりました。人は信頼されていると感じた時、感動と感謝の気持ちが沸き起こるのです。サロンのオーナーから聞かせてもらったこの話から、初心と信頼が活動の原点であり大事なこと、そして信頼は時間を超えて存在していることを教えてもらいました。こんな素敵な出来事をプレゼントしてくれたYさんとオーナーに感謝しています。