コラム
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2013/10/8
1340    生きる

人はその時、何を思うのでしょうか。内心は決して分からないけれど、不安と恐怖との闘い、そしてやりたいと思っていたことへの未練を思うように感じます。

ある人が病院で検査した結果、告知された病名が白血病。予想していなかった病名と即座の入院で表情に戸惑いの色が見えます。談話室で向き合って話をしていても、そんな心が見えてきます。

「明日から抗がん治療が始まるけれどゴールが見えないので、こんなことをしても無駄じゃないかなと思ってしまう。主治医からは、生存確率が10パーセントから20パーセントだと告知されました。助かる見込みもないのに苦しい治療をしなければならないのは逃げ出したい気持ちになります」。

「確率は低いけれど、それは確率であって、これからの闘いに覚悟を持ってもらうため厳しい目に言っているかも知れません。確率が10パーセントあれば助かる人もいるということです。その一人になりましょう。」

「東京オリンピックまで生きて、小さい頃の記憶にある東京オリンピックの実際を見てみたいなぁ」。

「大丈夫、きっと見ることができますよ。8年後みんなで一緒に見に行こうと話し合いました。その時は一緒に行きましょう」。

「検査結果を聞いてから夜、眠れなくなっています。考えると怖くて眠れないのです」。

「後やりたいことがあったのですが残念に思っています。人生の残りの3年間は外国旅行に行って回りたいと思っていました。人生の最後に世界を見たかったなぁと思っています」。

「やりたいことがあるということは良いことです。何もなければ闘うことはできませんから、それを目指して明日から闘いましょう。」

「検査結果が良いことを期待していたのですが、残念な結果を聞かされてしまいました。血液の癌なので全身の抗がん治療になります。そうすると健康な細胞にまで影響を与えるので不安があります」。

「今年いっぱい生きられるかなぁ。こんなことになるなんて、予想もしていませんでした。不安でいっぱいです。しかし話を聞いてくれて、治療に立ち向かおうと思うようになりました。10パーセントも確率があるということは、10人に一人助かる見込みがあるということなので、その一人になるように立ち向かおうと思います」。

話しあった会話の一こまです。不安と恐怖、そして将来が消えるかもしれないという恐れが現れています。人は明日がくると思っているので生きられるのです。本気で明日が来ないと思って生きている人はいないと思います。確信がなくても、信じられるから生きられるのです。病気はその信じる力を失わせる力を持っているので怖いと思います。

明日はやってくる。そんな希望の力が生きる糧になっていることを感じました。日が昇り、日が沈む、そしてまた日が昇るという自然の営みを毎日、見ていることが当たり前だと思っています。でもそんな日が訪れるのは当たり前ではないのです。自然の営みは止まることはありませんが、誰でもいつか当たり前のことに感謝する日が訪れます。世界に当たり前のことなどないということを知り、訪れてくれる今日という日を大切に生きたいものです。