コラム
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2013/10/4
1338    ムービングポスト

ある程度、結論が導かれて合意することになった案件、または両者がある程度のところで納得して合意した案件があるとします。その到着地点に向かって仕上げの作業を行い、結論を出してその案件を終えようとしています。ところが直前になって「吾は納得していない」だとか「あの件の中にこの課題解決は含まれていないので別だ」など、それまでの交渉過程をひっくり返してしまう人がいます。それまでの話し合いや時間は無駄になり、もう一度、最初から話し合うことになる・・。そんな経験は多くの人が持っていると思います。

このように一度、着地点を決めた後になって文句を言うことをムービングポストと言うそうです。言葉のとおり、得点が入りそうになればゴールを移動させて、得点が入らないようにするような行為です。

サッカーでも野球でも、ルールがあるからそれに基づいて試合が成り立つのです。試合の途中でルールを変えてしまうと試合は成立しません。サッカーでゴールを決めたと思ったところ相手チームがゴールの位置が少しずらしていただとか、野球の試合において、途中から相手チームの意向によって審判がストライクゾーンを変更していたなら、それは試合になりません。一度決めたルールを、途中で一方が覆してしまうと公平な結果は生まれません。

これは欧米では最も卑怯な行為と看做されるので、立場のある人達には取られていない手法です。ところがアジアの国ではよく見られる手法だと聞きました。日本人の中でも、このような交渉をする人がいることは悲しいことです。

これは問題を解決しないでいる方が都合の良い人がいることに起因しています。問題を先送りにしたい、問題が解決しない方が継続してお金を取れるなど、解決をしないでおこうと考える人がムービングポストという方法を取ります。

日常的に見られることとしては、話し合いの結果ゴールを決めました。そしてそのゴールのために用意をしていたところ、突然、「この件を忘れていたので、追加して解決の条件に入れて欲しい」という問題が起こることがあります。一度決めたことに追加条件を入れることはムービングポストです。

また話し合いをして決めたことを履行しない人もいます。履行を求めると、「あの時と状況が変わったから」という返事があることがあります。状況が変わったとしても、まずは約束を履行することが信頼関係の本です。二人で約束したことを時間の経過によって守らないことは正にムービングポストです。これでは約束を決めることはできません。ポストを動かす人との信頼関係は成り立たないことが分かります。

国際問題にもこの問題はあります。二国間で決めて確認したことを、後の時代になって「まだ解決していない問題だ」だとか、「あの時と事実の認識が変わったので改めて補償を求める」などの争いもあります。

これもムービングポストだといえます。

ゴールの位置が決っているのでお互いの話し合いは成り立つのであって、話し合って結論を出してからゴールの位置を変えてしまうような相手との話し合いは成り立ちません。

話し合いの途中であればムービングは良いと思いますが、結論を出した後のムービングはいただけません。ムービングポストは卑怯な行為であることを知っておきたいものです。