コラム
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2013/8/5
1305    意識して無意識に

「モチベーションを保つことは難しいので、常にモチベーションを高められる環境に身を置くことを考えています」という言葉をKさんが話してくれました。これは自分の気持ちを昂ぶらせてくれる研修会やセミナーを受けても、わずか数日経過するだけで、元の気持ちに収まってしまうことがあります。むしろどれだけ気持ちが昂ぶったセミナーだったとしても、その大半は気持ちが持続しないのです。セミナーから二日か三日経過するだけで、元の自分の居場所に戻ってしまう。そんなことを繰り返しています。それは本来の自分の居場所が心地良いからです。

普段の自分がいる場所にいると、やはりもとの自分でいる方が心地良いのです。

一流と呼ばれる人の集まりの中にいると気持ちが昂ぶり、会話も身振りも、会話の内容もその場に溶け込みます。普段の自分の場所と違うのが心地良いので、「頑張って自分もこのステージまで辿り着こう」と思うのです。

そして意気揚々として自宅に戻ります。そして翌日、いつもの自分と違う自分で会社に出勤します。いつもと違う大きな声で元気よく「おはようございます」と同僚に挨拶をしたところ、いつもと同じように挨拶が返ってこなかったり、小さな声で他の人に聞こえるのが恥ずかしそうな「おはようございます」という反応だったりします。昂ぶっていた気持ちが萎えてしまう瞬間です。

次の日も同じように会社に出勤して大きな声で「おはようございます」と挨拶をしました。

しかし同僚からの反応は昨日と同じでした。セミナーでいつもと違う自分に変わったはずなのに、二日連続して周囲が反応してくれなかったことから、無意識のうちに普段の自分に戻ってしまいます。

三日目の出勤の朝、挨拶は小さな声になり、その職場における居心地の良い位置を占めてしまう自分に戻っています。それから一週間が経過します。もうすっかり元の自分に戻り、周囲の環境に溶け込んでしまっています。一流の人との交流で自分を高めたいと思っていた自分が存在しなくなってしまいました。

こんなことを繰り返している間に人生は過ぎて行きます。Kさんはこの「居心地の良い自分」という罠に陥らないように、一ヶ月に一度はいつもの自分でいることができない環境に身を置くようにしているのです。一流の人との交流と刺激を求めて、いつもと違う場所に行きます。そうすることで昂ぶる気持ちを維持し続けているのです。

これを繰り返していると、月に一度はそこにいかないと気持ちが悪くなってしまったのです。歯磨きをしなければ気持ちが悪いのと同じように、習慣化することでいつもと違う自分でいることが自然になっていくのです。一流の人との交流機会を持ち続けているKさんは、いつもの場所でいる自分よりも、一流の人と一緒にいるKさんが本来の自分へと変化してきました。

意識して自分を変えようとすることを続けることで、やがて無意識のうちに違う自分に変わっていくのです。

無意識になるまでは、自分で違う自分でいることを意識する必要があります。違う環境に身を置くことを意識することで、無意識にそれを振舞っている自分に変えることができます。