コラム
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2013/7/17
1293    背景にあるもの

和歌山市内で開催された「たんざく」展に行ってきました。文字通り「たんざく」に文字や絵の作品にしている作品展です。案内をいただいた書道家の山西さんの作品に触れてきました。展示されていた作品は「龍」、「活」、「ありがとう」の三作品です。「活」は和歌山市に活力が満ちることを願って、「ありがとう」は私たちに向けての感謝の言葉です。

さて作品「龍」です。龍という文字を絵のように描いています。これでもまだ文字が残っています。作者の山西先生は、本当は文字を絵化するようなイメージの作品を創作しているのですが、今回は分かり易いようにと思ってこの作品を出展しています。

龍は地上のパワースポットに降りて来て、そこに傷跡を残して立ち去ります。龍の爪痕のある場所はパワーのある場所なのです。龍は中国の想像上の動物ですが、その性質からパワーのある地形を選んで降りて来るようです。龍が降り立つ場所には力が宿っていて、まるで龍はそこから飛び立つ人を期待しているように思います。

龍が降り立ってくれるような人でいることを知らせてくれるような作品です。

参考までに山西先生は、この一つの作品を仕上げるのに2,000枚以上の作品を描いたそうです。2,000枚超の中から展示された一作品なのです。そこには作者の思いや期待が詰まっています。一つの作品を世に送り出すために思いを込めて2,000枚も描く。プロでなければできないことです。それをやり遂げているのがプロであり、作品を通じて学びを伝えてくれているのです。作者が伝えたいものを受け取り、そこから学ぶこと。それが作品展の楽しみ方です。作品展の作者から話を聞ける機会は絶好の学びの場となります。作者と話を交わせることは中々ありませんから、作品談義はとても勉強になります。

一つの作品を仕上げるのに2,000枚超の作品を描きますから、作者の思いは作品の中に浸透していくことになります。龍の役割とあなたの役割をどう伝えるか、そんな思いが伝えられています。プロの仕事は本当に凄いと感じました。1分の1ではなく10分の1の作品ではなくて2,000分の1なのです。1つの作品の背後には2,000枚超の作品があるのです。

思いが伝わらない筈はありません。プロ野球選手の一つのスイングの影には数万回のスイングがあるように、この作品の影には2,000枚超、そしてこの作品が生まれる背景には数万書があります。

自分の果たすべき役割が見つからないのは、数万回という練習と繰り返しの時間を掛けていないからです。数回試みて「やめた」と思うことが多くありますが、それではプロには到達しません。私達は、見えているものの背景にあるものの存在を知らないだけです。そしてプロはそんな背後にあるものを見せることはしません。どうしたらプロに近づけるのか思うことがあります。簡単にやってのける影には、続けることが簡単ではない練習時間があるのです。

毎日継続してきた力が、作品という姿で私達の前に現れるのです。観てもらう。お金をいただくということは、お金に見合うだけの努力を続けてきた悩み苦しみ、そしてその道を楽しめるようになった長い時間が背景にあることを忘れてはいけません。

人が作品を観にいく、その人に会いに行く、作品を購入するという行動に移すのは、その人がその道のプロであると知っていること、プロから学べることも知っているからです。