コラム
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2013/7/16
1292    外交から学ぶ信頼関係

アベノミクスで好調の安倍政権。関係者から外交に関する話を聞く貴重な機会がありました。外交は日本にとっての生命線とも言えるもので、アメリカやロシア訪問で成果を挙げていることを知りました。

日米首脳会談はホワイトハウスでオバマ大統領との対談です。これまでの日本の総理大臣は毎年交代することが慣例のようになっていることから、最初、安倍総理も「また一年で交代の首相が来たのか」程度に思われていたようです。オバマ大統領は「聞きたいことがあればどうぞ」という姿勢だったことから、安倍総理は用意されていてスピーチ原稿を横に置いて、自分の言葉で今後の日米関係のために必要な要望を20分に及んで訴えました。本気のスピーチは、当初聞き流そうとしていたオバマ大統領の心に達しました。二つ目か三つ目の訴えの時からオバマ大統領はメモを取り出して、スピーチに聞き入ったそうです。

安倍総理の訴えに対して、オバマ大統領も原稿なしで自分の言葉で答えを返しました。外交が用意していた社交辞令的な原稿を飛ばして自分の思いを自分の言葉で伝えることで二人の間は信頼関係が生じていく感覚があったといいます。

そしてロシアのプーチン大統領との日ソ首脳会談でも、同じような感覚があったようです。プーチン大統領からの天然ガス購入の要望に対して安倍総理は、「まず北方領土の問題を解決してからでないと、日本人のロシアに対する感情は複雑なものがある」と切り替えしました。一歩も引かない姿勢で領土問題に踏み込んだといいます。そしてプーチン大統領はその場で、「面積で半分」だけ返還してもよいと言う主旨の発言がありました。下準備なしに返還の話があることは驚きですが、これは会話の中から「この人は信頼できる」と思わせたからに他なりません。信頼できない人と踏み込んだ話や本音の話をすることはありません。

ところが低姿勢ではなくて日本人の代表としての話を切り出したことから、プーチン大統領が信頼を寄せるようになったのです。本気で話をすることで、相手も本気で対応してくれることにつながります。

詰まるところ外交も人と人との信頼関係だということです。信頼関係ができているところから政策が議論されていきます。日米首脳会談で、米軍基地の移転問題や尖閣諸島は日本の領土なので日米安保の対象であることの問題などに踏み込んで話ができたのは、信頼関係が構築できたからです。

信頼関係は時間の長さで推し量れるものではありません。如何に本気で話し合うか。心を開けるかが大事になります。

外交の場で、机を向いて事務局が用意した原稿を読むだけで、相手の顔も見ないようでは信頼関係を築けません。どこの国とは言いませんが、オバマ大統領の前で約2時間も原稿を読みっぱなしの国のトップがいたそうです。原稿通りの話であれば相手は聞いていないと思うべきですし、心が通じ合う余地はありません。結果として直接会っているのに信頼関係は構築できないのです。

外交もビジネスも基本は同じだということが分かります。信頼関係ができてから政策の推進や取引が始まるのです。信頼関係のないところに本気の外交やビジネスは始まりません。

まずは信頼関係を築くこと。それが始まりであり、全てです。