コラム
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2013/7/12
1291    偉大な画家

知人からO・ヘンリーの短編についての話を聞かせてもらいました。

「O・ヘンリーが、偉大な傑作を描こうとした一人の画家の痛ましい物語を書いています。この画家は、自分の描こうとしている絵の素晴らしさを熱心に語り、その話を聞いた人は誰でも興奮しました。彼の傑作は、彼の名前をダビンチやレンブラントに匹敵するものにするはずでした。

しかし、その画家は持病のリュウマチが出たとか、気分がすぐれないとか,採光が悪いとかいった理由で、来る日も、来る日も絵筆をとろうとしませんでした。このような状態が、ずっと続いた末、ある日彼はベッドに横たわって死んでいました。その画家と一緒に、彼の幻の傑作も葬りさられてしまったのです」。

他人事でも笑い話でもありません。O・ヘンリーは全ての人に語りかけています。この偉大な傑作を書こうとした人物はあなたですよ、と。

やろうと思っていることがあっても、行動を起こさないことには何も成し遂げないまま棺桶に入ることになります。そして現世で「あるはず」だった幻のもうひとつの人生と共に焼かれてしまうのです。

自分が生きた人生と、自分が望んでいた空想の中の人生があります。空想の中の人生ですから現実にはありません。これがO・ヘンリーの言うところの傑作です。傑作を作り出すために必要なことをしなかったから、あり得たかも知れないもうひとつの人生が幻で終わってしまうのです。

傑作を創り出すには今直ぐ行動することが必要です。話をしているだけ、夢を語っているだけ、条件が整わないと文句を言っているだけ、気持ちが乗らないと先送りにしているだけ。全て、あなたが過ごすはずだった傑作とも言える人生を幻にしているのです。

言うことと行動を一致させることが、人生を傑作にするためにやるべきことです。傑作を幻に終わらせないために、思うことや望みがあれば即座に行動に移すことです。思いは内心でいる限りは何の抵抗はありません。ところが一旦、行動に移すと多くの抵抗が始まります。

思いが外にでると、他人からの意見や批判、あらぬ噂が飛び交うことになります。賢明な大人はそれを知っているので行動を起こさないのです。

自ら行動さえしなければ、批判されることはないからです。他人の人生を生きていれば責任はありませんから、不満や不安を感じていても、それに従うだけで何とか人生を乗り切れることを賢明な大人は知っているのです。

でも人生を終える時、「良かった、誰からも何も言われなくて。良かった、人生の途中に大きな問題がなくて。良かった、今回の人生は何もしなかったけれど、次に生まれ変わってからやり残したことをやろう」と思いたいですか。

全ての人が傑作を残せる訳ではありませんが、最低限、人生を傑作にしようと思い、行動を起こしたいものです。自分が創り上げたい傑作とも言える人生の可能性を、自分で追求するのが人生です。例えそれが傑作に仕上がらなかったとしても、思ったことを描いた過程に価値があるのです。ありたい人生を幻にしてはいけません。現実の人生を傑作にするために今、行動したいものです。