コラム
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2013/7/4
1286    勘違いは駄目

「組織とは預かっているものであり自分のものではない」。そんな言葉を聞く機会がありました。組織のトップに立つと権限が集中することから、組織の持っている権限が自分の権限のように錯覚することがあるようです。権限とは力なので、結果として自分が組織を支配する力を持っていると勘違いしてしまうのです。人は過信すると周囲の人の意見を聞かなくなります。人の意見を聞かないでいると、やがて意見や忠告してくれる人が去り、周囲にいなくなります。

優れたトップは自分の考えを持っていますが、それを押し付けるようなことはしません。対応すべき案件がある場合、優れたトップは内心、結論を持っています。もし誰かから次のような質問があったとします。「この案件についての考えはありますか」。優れたトップの回答は次の通りです。「あなたの考えを聞かせて欲しい」。

あくまでも人の意見を聞く姿勢を取るのです。結論を持っていても、自分の意思が固まっていたとしても、相手の意見を聞くという姿勢を取ります。

もしかしたら言ってくれた意見が的を得ているかも知れないからです。もしかしたら事態を打開してくれる答えがあるかも知れないからです。そして相手の意見を聞くことで判断材料が増えるからです。

自分の意見が全て正しいので変える気持ちはないと思っていると、相手の意見を聞くことはしません。これはトップとして最悪です。次のような展開になるからです。

同じように「この案件についての考えはありますか」という質問がありました。それに対して「もう案は固まっている」と答えました。相手は案が固まっているのであれば、自分から話をしても無駄だと思うのです。人は無駄なことに関して必要以上に話はしませんし行動起こしません。

この場合のトップは相手の意見を聞く姿勢になっていないことから、もしかしたら良いと思われる答えを聞く機会を逃してしまいます。例え意思を固めているとしても、意思決定の選択肢を狭めることになります。そして相手の意見を聞かない人であるという評価をされてしまいます。人の意見を聞く姿勢を持っていないと評価されると、やがて「何を言っても無駄」だと思われ、周囲は意見をしてくれなくなります。そうなると自分が全てだという思いが強くなり、やがて本当に誰の意見も聞かなくなるのです。

トップには人の意見を聞く姿勢、人から学ぶ姿勢、そして素直な心が絶対に必要です。そんなトップは優れたトップであると評価され、意見を言ってもらえ易くなります。仮に聞いた意見と違った結論を出したとしても、相手は「自分の意見を聞いてくれた結果、トップが結論を出したのだからそれに従おう」という気持ちになります。そしてその次からも大事な局面では意見をくれることになります。

常に周囲から意見を言ってもらえる環境を作るのもトップの資質です。会社を初めとする組織、皆さんから与えてもらっている議席は、皆さんからの預かりものです。これまでそこにいた人、組織を継続してくれた人達が守りつないでくれたものなのです。そこにいる自分は、先人から預かったものであり、組織を次の人につなぐことを意識すべきことです。自分のものだと思って瞬間に驕りが生じ、トップの資質を失うことになります。