コラム
コラム
2013/7/2
1284    石垣

人は大きな石を積みたがるけれど、大きな石も小さな石もどちらも大事なものであることを知る必要があります。お城の城壁は大きな石とそれを支える小さな石で構成されています。大きな石だけではお城を支えられないから、大小組み合わせて使用しているのです。

人は大きな石の存在だけを重視する傾向にあります。重要なことを決定するに際して、部長などに丁寧な説明を行い、その他の人を無視することがあります。民間企業であれば、その取り組みを実現させるために知事や部長を知っていることに価値があると考え、同意取り付けに人脈をたどることがあります。

しかし知事や部長が納得しても、世論が納得していないものは現実のものにはなりません。

その企業は皆さんの役立つモノを社会に送り出すという視点が欠けているのです。石垣に例えると大きな石だけを見ていて、大きな石の隙間を埋めている小さな石の存在に気付いていないのです。世の中は絶妙の組み合わせでできています。強い人だけの集団、弱い人だけの集団で物事が決定していくことは少ないと思います。常に少数意見を留保しようという動きはありますし、権力者は権力があるからといって強力に権利を執行していけば、やがて追放されることになります。

石垣と同じように、それぞれの人には役割があり、どれが欠けても社会は成り立たないことを知っておきたいものです。

もうひとつ、大きな石を城壁に積むためには、多くの人の協力がそこにはあったのです。石切り場から切り出してお城に運び、積み上げるまでには時間と労力を要しています。大きな石はそんな人に支えられてここに存在していることを記憶に刻んでいます。決して自分ひとりで、お城の良い場所に最初から座っていると思っていないのです。みんなの支援があってここに存在していることを知っている謙虚な存在が大きな石にはあると思います。

立場のある人は自分だけの力でその地位にいるとは思っていません。多くの人の支援と引っ張りがあって、今ここにいることを認識しています。そのため小さい石の立場の人を無視して、自分のところだけを向いている人の心は透かしています。大きな石は、お城は大きな石だけで成り立たないことを知っているように、立場のある人は自分ひとりの存在で社会が成り立っているとは思っていないのです。

大きな石であっても小さな石であっても、どちらにも大切な役割があることを知って、物事を依頼してくる人を見抜く力があるのです。

人は兎角、大きな存在や派手な存在、目立つ存在の人に良い顔をして、それ以外には違う顔をする傾向にあります。でも支えのないお城は時間の経過と共に崩れてしまいますし、支えが取れてしまうと建っていられないのです。

知事は県民の皆さんから信任を受けてその職にあります。県の部長は先輩や同僚、そして部下から支えられてここにいることを知っているのです。尤もそれを知らない人はその立場に立つことはありませんが、上を向いている人には分からないものです。

最後に。大きな石にしても自分の上には天守閣があり、それを支えていることを自覚しています。自分は最高の存在ではないことを知り、社会を支える一員であることを自覚しているのです。天の高いところから見られていることを知ると謙虚でいられます。