コラム
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2013/4/23
1242    ぽこあぽこ(その1)

人間文化学博士の金益見さん。毎日新聞夕刊に「毎日ぽこあぽこ」という連載があり楽しんでいます。毎週、自分の周囲には小さな幸せがたくさんあることを教えてくれます。幸せは自分で気付くことで幸せだと分かります。ここに存在しているのに気付かなければ幸せな気持ちにはなれません。幸せとは自分で気付くことで得られる満足感であり、どんな些細なことにでも幸せを感じられることが幸せなことなのです。

では幸せになれるいくつかを紹介します。

「私は、お店でいい接客をしてもらったら、店員さんに「いい接客ですね」となるべく伝えるようにしてきた。―中略― 物心がついたある日のこと、父に店長を呼び出す理由を聞いてみた。「あの店員の子、すごい接客が良かったから、店長に言ってあげたら時給のアップにつながるかもしらんやろ?料理だっておいしかったら料理長呼び出して伝えるのと一緒や」。

私はその時、父を心底かっこいいと思い、大人になったらまねしたいなと思った。そして先日、銀行でとても丁寧な対応をしてもらった時、「今だ」と思った。私は支店長を呼んでもらって、銀行員さんの対応のよさを伝えた。大人になったらやりたかったことができた、春のはじまりの話」。(毎日新聞夕刊。「父に学んだふるまい」平成25年4月2日掲載。)

褒めるという行為は、相手にとっても自分にとっても心が温まる行為です。褒められた人は気持ちが良いものですし、実は褒める人も気分が良いのです。気分が良いから褒め言葉を言葉にするのです。人を貶すことは得意な人がいますが、人を褒めることができる人は素敵な生き方をしています。人を褒めるということは自分に余裕があり自信があるからです。周囲を見られる心の状態、相手を尊重できるだけの自信があるのです。

人を褒めるって格好良いことなのです。

「いい商品だなと思ったら手紙を書いたり、お客さま窓口に電話するようになった。窓口に電話をすると、驚かれることが多い。自ら電話してくる人は、ほとんどがクレームらしく、「こんなことは初めてです。開発部に必ず伝えます。ありがとうございました」と逆にお礼を言われたりする。悪いことは能動的に口に出す人が多い。それはそれで意見だし、次につながることがあるから悪くない。でも、いいことも悪いことと同じくらい口に出したら、社会にもっとやる気や元気が満ちるんじゃないかと、私は思う」。(毎日新聞夕刊。「よいことは口に出す」平成25年3月25日掲載。)

良いことは言葉にして誰かに伝えることで言葉にした人も、言葉を受けた人も幸せになれます。そんな素敵な行為なのに人は中々、良い言葉を誰かに伝えられないのです。逆に人を批判する言葉を発することがあります。でも批判からは対立や嫌悪を誕生させるだけで、自分にとっても決して良い出来事ではないのです。

第三者から「○○さんがあなたのことを褒めていたよ」と伝え聞くのと、「△△さんが××だとあなたの悪口を話していたよ」と伝え聞くのとではどちらが気分良いでしょうか。多くの人は褒めてくれた人に好意を持ち、それ以降親しみを感じるようになります。自分のことを批判させて喜ぶ人はいないと思います。

自分がされると嬉しいことは誰かにすべきですし、自分が気分を害するようなことはすべきではありません。