コラム
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2013/4/3
1228    最高の一日

平成25年に70歳になるUさん。現役を引退してから10年が経過しています。平成24年に膀胱に癌が見つかり手術をしました。四度の手術で癌は治療できたのですが、今も三ヶ月に一度は検査のため病院に行っています。現役時代からお世話になっているUさんが元気に今を話してくれたことを嬉しく感じました。

会話の中で「命が限りあるものだと分かった今だから言えることがあります。一日一日がとても大事な日だということです。この気持ちで若いころを過ごせたら、もっとと違うことをやれたのに、もっと充実した生き方をしていたのにと思います」と聞かせてもらいました。

毎現役時代は毎日が必死で、苦しいけれど楽しくて、流れるように充実した日々は過ぎて行きます。毎日を全力で走っているように思いますが、実は今日と変わらない明日があると思っていますし、この先も永遠にこのまま続いていくと信じています。だから気分の乗らない日もありますし、飲み会の疲れで午前中、ぼんやりしている日もあります。口論したり、その場から逃げ出したりしたりする日もあります。

若い頃は自分が死ぬと思って生活していません。だから無駄と思えるような毎日を過ごすことをもったいないとは思っていません。今日やらなかったとしても明日やる時間がある、来週でも、来年でもやろうと思えばやれると思っています。今日できなくて後悔することよりも、まだ先があると安心感を持っています。

でも癌になり、他の誰とも違い永遠と思っていた自分の命にも限りがあることを知ることになりました。自分だけは死ぬことはないと多くの人は思っています。でも信じたくはないけれど自分の命にも限りがあるのです。

明日で命が終わるとしたら、一体どんな一日を過ごすのでしょうか。癌はそんな命について考える時間を与えてくれます。癌を克服した時、一日の重さ、この日に感謝する気持ちが芽生えてくるといいます。今日という一日はどけだけ素晴らしいものなのか。朝起きて夜寝るまでの24時間という時間は、生涯にたった一度だけ私に与えてくれた時間なのです。明日になれば今日の日は間違いなく過ぎ去っています。昨日と同じように見える今日ですが、生涯たった一度の日であり私という命が輝いている日なのです。

癌で明日が見えない日が訪れたとします。今日という日はどう見えるものなのでしょうか。きっと感謝に満ち溢れる日であると思います。

今日会える人に感謝。朝刊に感謝。配ってくれるパンに感謝。テレビに感謝。転寝ができる時に感謝。午後を迎えられたことに感謝。沈む太陽に感謝。全ての言葉に感謝。そして遠ざかる意識の中で何を思うのでしょうか。自分が生きた時は一瞬の出来事のように思うものでしょうか。そして明日は来ないのです。

最後の一日の光景を描くと、当たり前のように与えられている一日がとても大事なものに感じます。最後の一日も今日の一日も時間も重さも同じものです。命が限りあるものだと気付いても、気付かなくても、今日はどの時よりも最高の一日のです。

命が終わろうとする前日は、自分が本当にやりたかったことをやれば良かったと思う筈です。限りある命ですが、まだやりたいことをやれる時間は残されています。

今日が最高の一日であり、最高の一日にする。そんな気持ちで毎日を過ごしたいものです。