コラム
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2013/3/7
1210    好きになること

「指導者は好きにさせる力を持たなければならない」(増田明美、電気新聞時評、平成25年2月15日12面、掲載記事)。1984年のロサンゼルスオリンピックマラソン競技出場のスポーツジャーナリストの増田明美さんの言葉です。

この時評には具体的に好きにさせるために必要なヒントが記されています。

「私がお手本にしているのは小出義雄さんだ。とにかく選手を好く褒め、よく励ます。40キロを走っている選手に「なっちゃん、いいね。今の1キロは3分10秒」。暫くすると「なっちゃん最高。ここからが踏ん張りどころ」と。「いいね。最高」が多い。2時間以上の練習を見つめる目はいつも真剣だ。終わった後、選手にはゆったりと具体的によかった所を褒めたり問題点を指摘したりするためである。小出さんの指導は褒めることと観察力が特徴だと感じる。2月。定例の異動で多くの方から転勤の挨拶を頂く。新しい職場で部下や上司との出会いが待っているだろう。ぜひ仕事が好き、職場が楽しいという空気を生み出し育てて欲しい。きっとそれは成果につながると思うから」。

人を褒めることは簡単なことですが、それを実践している人は少ないように感じます。せめて自分は褒めることをしたいと思っています。日本人は余り他人を褒めることに慣れていことから褒める言葉を持ち合わせていない場合がありますし、褒められた人も照れくさいと思います。

しかし人を褒めることと褒められることは嬉しいことなのです。人を褒めるためにはその人の良いところをよく見る必要があります。良いところを見ているとその人のことを人間的に好きに思うようになります。それが良い人間関係につながります。人は自分が好意を持っていると相手も好意を持つことが多いからです。

そんな人間関係を築くために大事な褒めることは以外に簡単なのです。その人を見て、素直に良いと感じるところを言葉にすれば良いからです。

「笑顔が素敵ですね。笑顔の表情が一番です」。「そのネクタイセンスが良いですね」。最初に感じたことを相手に伝えるだけです。

人から褒められるとそれが自信につながります。自分の笑顔が素敵だと思うようになりますし、誰かが見てくれていると思うと、毎朝ネクタイを選ぶ楽しさを感じるようになります。

笑顔に自信がある、ネクタイのセンスに自信があると思えると、自分のことが好きになり、自分が好きなことは武器になります。自分で自分のここが好きだと思える人は少ないのです。しかし誰かから褒められると、褒められたところを好きになります。指導者の役割は、自分のことを好きでいられる人を育成することです。自分のことが好きな自分、好きな仕事、好きな職場だと感じることが大事なことなのです。

同じ仕事をしても好きなことだったら仕事に心が込められます。嫌な仕事だと思っていたら心が込められていない成果になります。形は同じでも、心のあるなしは心のある仕事をしている第三者にも分かるのです。心を込めた仕事をしているのは優れた経営者であり優れた人物です。そんな人と仕事をするためには自分を好きでいること。好きな自分が関わる仕事は良い成果を出してくれるのです。成果だけを求めるのではなくて、まずは自分を好きになってもらうこと。それで人は成果を生み出してくれるのです。